ついにコロナ相場も終焉か?2021年後半の投資先・資産配分を考える

2020年5月は、3月のコロナショック後に2番底が来るか?と警戒されたのも束の間、株価は急上昇となりました。しかし、今年の5月は前半から荒れ模様となっています。

月初から好調であったNYダウは35,000円の大台に到達した5月10日を境に急落、日経平均も米国を震源とする世界的な株安につられ、29,000円台半ばから一時年初来でマイナスとなる27,000円台前半まで下落しました。

今年の後半はアフターコロナを見据えた相場へと向かうのでしょうか。米国と日本の景気状況と相場の需給の観点から見ていきたいと思います。


米国発の景気過熱不安、争点は早期の金融引き締め開始

今回の株安の主な要因には米国の消費者物価の急上昇が挙げられます。現在の米国株式市場では、早期の景気回復が達成されれば早期の金融引き締め開始が懸念され、株が売られるという構図になっています。

そのため、緩やかな景気回復であれば金融相場から業績相場へのスムーズな移行が期待できますが、急速な景気回復の兆しが見られた場合は市場が嫌気する形となっています。今回はまさに景気過熱の兆しが市場に動揺をもたらしました。

5月12日に発表された4月の米消費者物価は前年同月比で事前予想の+3.6%を大きく上回る+4.2%と約12年ぶりの上昇を記録しました。中古車価格の高騰など一部の項目の影響が大きかったとはいえ、順調にワクチン接種が進み経済再開が進んでいることや、3月に成立した経済対策による1人約15万円の現金給付が行われたことが追い風となり、堅調な伸びが確認されました。

同じく一定の景気回復を見せているユーロ圏や、2020年10月以降6ヶ月連続で下落している日本と比較するとしても際立った物価上昇率であることがわかります。

しかし上昇幅が予想を大きく上回るものであったことから、持続的な物価上昇を予想する向きも強まり、米国の10年債利回りは4月以来の1.7%をつけるなど急騰。ハイテク株中心のナスダックが大幅に下落した上、NYダウも10日~12日までの3日間で高値から約1,500ドルの急落となりました。

米国の金融政策を決めるFRBは過熱する経済状況を踏まえてもなお、早期のテーパリング(量的緩和の縮小)を否定していますが、確実に議論のタイミングは早まってきており、景気の回復動向との両にらみで相場への影響を考える必要性が高まっています。

日本では早くも金融緩和縮小の動きが

米国を筆頭に世界的に金融緩和の縮小が警戒される中、カナダでは一足先に資産の買い入れ額の縮小が決定されるなど、動きも出始めています。

また日本でも、金融緩和の象徴であった日本銀行によるETF買い入れのルール変更が3月中旬に発表され、徐々に金融緩和の縮小が始まっていると考えられます。従来の枠組みでは、TOPIXの前場終値が前日終値から0.5%下落したことを目安に、後場に約700億円のETFを日銀が購入されていましたが、新年度以降の新ルールでは基準が変更となり、特に5月第2週の連日の大幅安の場面でもETF買い入れは一度もありませんでした。

これにより市場参加者の戦略が早期に変わってくることが考えられます。従来の枠組みで存在した、下落時でも下値では日銀の買いが入るという安心感がなくなるほか、今度はETFの買い入れが止まり売却に転じる”出口戦略”も意識されることで、指数の上値が重くなっていく可能性も秘めているでしょう。これは日本の株式市場にとってマイナスの要因として考慮していく必要があるでしょう。

試しに5月14日までの30営業日でのNYダウと日経平均のパフォーマンスを比較すると、日経平均が約8%ポイントほどNYダウに劣っていることがわかります。これは先に触れた景気の回復歩調の違いもさることながら、米国が金融緩和縮小の表明の先送りを続ける一方で、日本は早くも実質的な金融緩和縮小に動いていることの影響も否めないのではないでしょうか。

日本で行われている中央銀行による株式の買い入れは特殊な政策であり、株式市場へ直接的な影響が大きかったこともありますが、今後、世界的に本格的な金融緩和縮小が行われた場合、同じようなマーケットの反応が各国で起こる可能性があります。今年の年後半は特にグローバルな視点で投資を行っている場合、そのような可能性を考えた上での投資戦略の構築が求められるでしょう。

今後のポートフォリオの検討は?

それでは今後はどのような投資戦略を考えていくと良いのでしょうか。銘柄選びとポートフォリオの観点から見ていきましょう。

まずは銘柄選びですが、今までの1年とは選好されるセクターが変わってくると言えるでしょう。特にこれまでの1年間は世界的な低金利を背景に成長株のバリュエーションが高く評価されている中での株高でありました。しかし今後は、経済回復を背景とする米国金利の上昇、世界的なテーパリング開始の本格的な議論を踏まえ、大きな流れとしてはグロース株からバリューへのシフトが本格的に起こってくると考えられます。

もし成長性の高い銘柄をリサーチする場合でも、業績が伸びているという観点だけでなく、業績を踏まえた株価水準が説明できる水準を超えていないかを吟味した上での銘柄選びが求められるでしょう。業種ではすでに上昇を見せている銘柄もあるものの、景気回復局面に強い鉄鋼や造船、金利上昇局面に強い銀行や保険業などの業種のリサーチが利益へとつながるかもしれません。

またポートフォリオ構築の観点では、金や債券などの安全資産へのシフトも強みを発揮するかもしれません。特に米国の物価上昇により、名目金利から期待インフレ率を引いて求められる実質金利が低下傾向にあり、現金の価値下落のリスクヘッジの期待からそのため金利の影響を受けない金の需要は高まっています。

実際に4月に1トロイオンス1,700ドル近辺だった金価格は5月に入り1,800ドル台後半まで上昇しており、今後の金利上昇次第では、昨年夏場につけた2,000ドル台への上昇期待も持てるでしょう。

金融政策に後押しされた相場からの転換点を迎える中で、株式の中では業種のシフト、資産配分の中では安全資産へのシフト等、さまざまなアプローチで資産を守る行動がポートフォリオの強化につながるかもしれません。

<文・Finatextホールディングス 菅原良介>

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