内容や結果より「意識」プレシーズン戦で選手に問いかけたこと

再び女子サッカーに注目してもらうために努力します(写真は2011年8月、なでしこジャパン岡山合宿)

【なでしこリーグ歴代最多182点 大野忍 ひとりごと】今秋開幕の「WEリーグ」に向けて先月からプレシーズンマッチが組まれ、私がコーチを務める大宮も本格的な対外試合をスタートさせました。立ち上げたばかりのチームにとって実戦経験は練習の何倍もの効果があります。勝ち負けはもちろん大事ですが、この時期に自分たちがどのくらいの位置にいるのか。そしてどんな課題が出てくるのかを見るには絶好の機会だと思って試合に臨みました。

最初の試合は4月29日の千葉戦。相手は旧なでしこリーグの常連で力のある選手もいる。しかもこの日はあいにくの雨。それまで雨のピッチで練習する機会が少なかったので不安は尽きなかったのですが、結果は1―0で“初勝利”を収めました。

立ち上がりから攻め立て好連係からの崩しなどでチャンスをつくり、前半終了間際にセットプレーで先制。後半は相手の反撃に遭いましたが、決定的な場面はつくらせず、こちらの狙い通りの試合ができました。選手たちだけでなく、岡本武行監督や私たちコーチ陣も一定の手応えをつかんだ内容でした。

2試合目はホーム・NACK5スタジアムで大宮とともに新規参入する広島と対戦しました。ところが、前半はお世辞にも褒められた内容ではなく、相手のMF増矢理花選手の突破から最後はFW上野真実選手に決められて失点。2人は日本代表候補にも入る実力者で、改めて「個」の力の重要さを知らされました。

ですが、内容や結果より私がとても気になったのは選手たちの「意識」の問題でした。この試合、女子のプレシーズン戦でありながら3000人近くのファンが集まってくれました(公式発表は2834人)。人気、知名度ともに低下した女子サッカーのことを再び知ってもらうためには、こういう試合で女子サッカーの魅力をアピールする必要があります。

だから、私はハーフタイムのロッカー室で戦術の話ではなく、選手たちにこう問いかけました。「今日はたくさんの方が応援に来てくれているけど、誰を見に来たの? みんなでしょ? そのお礼としてみんなはどう応えるの?」

どう選手に響いたかはわかりませんが、彼女たちが取り組んだ結果、変化は見られた後半になりました。結果は0―1で敗れましたが、終了後にスタンドから大きな拍手をいただいたことが、この試合の意味と成果を物語っていたと思います。

現役を引退し、コーチを務める私が常に考えているのは「女子サッカーのために何ができるか」。試合を見に来た人が、また次も来たいと思わせるプレーを見せる。私はそんな選手を一人でも多く育てたいと考えています。

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