国境離島新法4年 雇用創出1000人超 「社会減」5割改善

 2017年度施行の国境離島新法。長崎県内の対象地域ではこの4年間で新たに1055人(20年度見込み分含む)の雇用を創出し、五島、対馬、壱岐3市と新上五島、北松小値賀両町の計5市町で人口の転出が転入を上回る「社会減」が約5割改善した。同法は10年間の時限立法。各自治体は前半最終の21年度の目標に向け諸施策を推進する。
 同法は領海などの保全のため、離島の地域社会を維持するのが目的。雇用機会拡充、航路・航空路運賃引き下げ、農水産物の輸送コスト支援、滞在型観光促進といった各事業に国が交付金を支給し、地元の県市町なども一部費用を負担する。4年間で本県への交付金は100億円を超えた。
 これまでに生み出された雇用の受け皿は自治体別では五島市が最多の452人。次いで壱岐市242人、対馬市174人、新上五島町144人、小値賀町27人など。施行から3年間の雇用実績は全体で783人に上り、うち島外からの移住者は3割弱の219人だった。
 雇用拡充に伴い人口の社会減も改善。法施行前の16年、離島5市町の転出超過は1051人だったが、20年は543人に縮小。このうち五島市は19年と20年、小値賀町も20年は転入が転出を上回る「社会増」を達成した。
 一方、5市町の延べ宿泊者数は17年の84万4千人が18年には91万9千人に増加したが、19年は日韓関係の悪化に伴い対馬市への韓国人観光客が落ち込んだこともあり、81万人と減少した。
 県は社会減を5年で5割改善させ、10年で社会増減の均衡を目指す。ただ雇用機会拡充事業の新規採択件数は17年度の116件から20年度は71件と伸び悩み、県は「島内企業に事業が一定浸透したことも要因」とみる。さらには新型コロナウイルスの感染拡大で企業活動の停滞を招き、雇用拡充に影響が出ないか懸念されるという。
 地元市町は本年度、島内企業への意向調査などで事業の新規活用の掘り起こしに努める。さらに福岡のような都市部で事業説明会を開いて島外企業の島内進出を促す方針だ。

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