間寛平 「笑っていいとも!」レギュラーのきっかけはお客さんをドン引きさせた“引きずり女”

間寛平が芸能生活51周年を迎えた。それにともない、座長新喜劇と吉本芸人によるネタの「間寛平 芸能生活50周年+1 記念ツアー いくつになってもあまえんぼう」がスタート。5月26日には最新CD「8、9、10の歌~BEAT THE CORONA(コロナに負けるな)~」が発売される。芸能生活の集大成を見せると意気込む寛平に迫った。(interviewer/伊藤雅奈子)

――今回のツアーポスターには、寛平さんがこれまで演じてきたキャラクターが多く載っています。特に印象深いのはどれですか?

「引きずり女」かなぁ。僕は39(歳)のときに東京に出てきたんですよ。仕事がぜんぜんなかったから、マネージャー(比企さん)も仕事がない。比企が「笑っていいとも!」(フジテレビ系)に「寛平を出してくれ」って頼んでくれて、出してもらえることになったんですよ。そのとき、なんか一発やらなぁアカンと考えて、大阪になんば元町っていうとこがあるんですけど、そこに夜中の12時ぐらいに出てくる手で物を持つのが邪魔くさい言うて、全部髪の毛にくくって歩くおっさんがいてたんですよ(笑)。そのことをマネージャーに話したら、「そのおっさんをヒントに“引きずり女”にしましょう」と。新幹線のなかで絵を描いて、2人で作り上げたのを覚えてますわ。髪の毛が10mぐらいで長くて、巫女さんの格好でっていうのを「いいとも!」に発注したら、作ってくれたんです。

――昼の大人気生番組だった「いいとも!」に初めて登場したときのリアクションは?

あの日、司会のタモリさんに(片岡)鶴太郎さん達が、トークしてたらステージが暗くなってね、タモリさんの「なんだ、これは!?」という台詞があったら、「ギー……」と扉が開く音、「シャリ~ン」と鈴が鳴る音があって、「引きずり女でございます~」って登場したんです。タモリさん、鶴太郎さんは腹抱えて笑ってくれたんですけど、お客さんはシ~ン。めっちゃ引いてましたわ。知らんもんね。でも、そっからレギュラーになったんですよ。

――運命を変えた女、ですね。

「NHK紅白歌合戦」にも出たしね(91年)。途中経過で、「今、赤組がリードしてるでしょうか、白組でしょうか」と言うのが昔はあって、「さぁ、どっちでしょう!」と言われたあとに、「引きずり女でございます~」って。赤いダルマと白いダルマを髪に結んで、出たんですよ。客、引いたねー(笑)。

――また引かれた(苦笑)。

数千人が引きましたからね。それを(明石家)さんまちゃんが観てて、めっちゃおもろかったらしいです。次の日の朝、さんまちゃんが司会をやってた生番組に出たら、「めちゃめちゃ客引いてたなー」って笑いにしてくれたんですよ。それでまた人気が上がっていった。

――さんまさんとは今も関西ローカルの「痛快!明石家電視台」(MBS)で共演されていますね。そもそも吉本興業東京支社の第1号タレントがさんまさんで、寛平さんが2人目なんですってね。

そうです。あのころ、関西の芸人は(東京に)いてませんでした。昔は、「関西の芸人は箱根の山を越えても失敗して帰ってくる」と言われてて、受け入れてもらわれへんかった。それがさんまちゃんが頑張って、その後にダウンタウンが頑張り、(吉本印)天然素材が売れ、東京事務所で若手を集め出した。それが今につながってるんですね。

――そんななか寛平さんのポジションは喜劇役者であり、テレビタレントでもあり。

吉本興業では芝居をしてきたタレントやけど、し続けてきたんですよ。「24時間テレビ」(日本テレビ系)のチャリティマラソンで走ったり(92年、93年、95年)、スパルタスロンをやったり(※91年の3度目の挑戦で完走)、忌野清志郎さん(故人)と「フジロック(フェスティバル)」に出たり、「サマソニ」(サマーソニック)に出たり。

――先駆けですね。

走ることはね。誰もしてへんかったから。

――現在71歳ですが、まだまだ走りますか?

もう無理やんかぁ。10㎞や20㎞やったら走れるけど、時間と戦うことはもうない。「24時間テレビ」のときはイケイケやったけどね。

――ルーツである新喜劇の役者としてはいかがでしょう。

みんなの力を借りながらね、やっていくでしょうね。今回もツアーで周りますけど、若い子らに助けてもろて。今はすっごい若い子に甘えさせてもろてますよ。ツッコんでもらって、お願いごとを聞いてもらって、今回も出てくれる。

――10月までのロングサーキットですが、座長として思うことは?

集大成になるやろうね。全国を回ったりするのは最後やろうね。もうでけへんわ。超売れっ子の千鳥や見取り図、かまいたち、おいでやすこが、中川家がスケジュールを調整して出てくれるわけやから。

――稽古はどこまで進んでますか?

完ぺき。不安な点を挙げるとすれば、オープニングの浪曲。10分、20分できればいいねんけど、3~4分でまとめなアカンからね。なんでか言うたら、このメンバーやからめっちゃめちゃ伸びると思うねん(笑)。そこが心配ですわ。集大成やからね、これが吉本新喜劇、これが吉本興業のお笑いというのを見せますわ。

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