F1第5戦水曜会見(1):モナコで3勝のハミルトン、ラウダに捧げた2019年の勝利は最高の思い出

 1929年から開催され、現役では世界最古の自動車レースのひとつであるモナコGP。このレースをF1ドライバーとして戦うことの特別さが、水曜会見に出席したドライバーたちのコメントの端々から窺えた。

 最初に登場したのはモナコを3度制したルイス・ハミルトン(メルセデス)と、2006、7年と連覇したフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の世界チャンピオンコンビだ。

 モナコ公国の中学生からの質問は、「新型コロナウイルスによって、レース界はどう変わってしまいましたか? そしてあなたには、どのような影響が?」というものだった。「わお、すごく大人びた、すばらしい質問だね」と微笑むハミルトン。そしてこんな風に語り出した。

「コロナによって世界はすっかり変わってしまった。レース界も多くのレースが中止になり、F1でも去年はモナコやブラジル、鈴鹿など、楽しみにしていたグランプリが開催されなかった。まだ大観衆のなかでレースができないとか、個人的には友人たちに自由に会えないとか、不自由な部分はいっぱいある。すごく大きな挑戦状を、僕らは突きつけられてると思う」

「でも僕らはいつも前を向いてるし、世界中のファンに支えられてることを実感した1年だった。そしてモナコは2年ぶりの開催にこぎ着けた。本当に素晴らしいことだよ」

2021年F1第5戦モナコGP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)&ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 一方のアロンソは、コロナ後のノーマルな日常が待ち遠しいと語る。

「レースへの影響で言えば、移動がものすごく制限されたことかな。一度サーキットに来てしまえば、ほとんどコロナのことは意識しない。でも現場スタッフは隔離されたり、レースの合間も自国に帰れずに、家族に会えないことがしょっちゅうだ。それはすごく辛いことだよね」

「でも世界的なイベントが次々に中止されるなか、F1が継続して開催されてるのは本当にすごいことだ。今週のモナコは、市街地レースで観客を入れるという勇気ある決断をした。こうやって少しずつ、ノーマルな日常に戻っていくといいね」

「モナコの最高の思い出は?」という質問には、アロンソは「やっぱり2度の優勝だ」と答えた。

「僕の場合、モナコの2勝はそれぞれ全然違う展開だったけどね。2006年の初勝利は、最初はマイケル(ミハエル・シューマッハー)がポールだった。でもペナルティで最下位に落ちて、僕が繰り上がった。それが決まったのが、レース前夜の10時過ぎだったんだ。不思議な感覚だったよ。対照的に2勝目の2007年は、予選からレースまでずっとスムーズだった。どちらの勝利も、モナコでの予選の重要さを実感したレースだったね」

2006年F1第7戦モナコGP 優勝し、アルベール2世からトロフィーを受け取るフェルナンド・アロンソ(ルノー)

 そしてハミルトンは、2019年の勝利を挙げた。

「レース自体すごくタフな展開だったし、何よりニキ(・ラウダ)が亡くなった直後の勝利だったから」

 メルセデスF1のアドバイザー役だったラウダは、モナコGP開催の1週間前に急死した。ラウダを深く尊敬していたハミルトンは水曜会見を欠席、ポールを獲得した際には金網によじ登って喜ぶほど、感情を爆発させた。そしてレースではチームのタイヤ選択ミスに苦しみながらも、なんとか逃げ切ったのだった。

 改めて説明するまでもないが、2007年にF1デビューしたハミルトンの最初のチームメイトがアロンソだった。シーズン前半のアロンソはモナコ以外のレースでも勝ち星を重ね、タイトル争いで首位を独走した。しかしその後ハミルトンが台頭し、同時に当時のロン・デニス代表との関係も修復不可能なまでに悪化、最終的にフェラーリのキミ・ライコネンにタイトルを奪われてしまう。

 アロンソはルーキーのハミルトンにも敗れ、選手権3位でマクラーレンを去った。その後のハミルトンが7度のタイトルを獲得したのに対し、アロンソは2006年を最後にF1タイトルとは無縁だ。しかし記録では遠く及ばないとはいえ、彼も偉大なチャンピオンであることは言うまでもない。

亡きラウダにモナコGPの勝利を捧げたルイス・ハミルトン
2019年F1第6戦モナコGP メルセデス、ラウダ追悼の意を込め、スペシャルカラーのヘイローを使用

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