携帯ない高齢男性、ワクチン予約で呆然 役所内の公衆電話で3時間超かけ続け「あかんわ」

山科区役所内の公衆電話からコールセンターに電話を掛ける男性。3時間半粘ったが、つながらなかった(京都市山科区役所)

 65歳以上に新型コロナウイルスワクチンを公共施設などで接種する「集団接種」の予約が20日、京都市で始まった。しかし、コールセンターには電話がつながりにくく、インターネット予約も早々に枠が埋まった。予約できなかった高齢者からは、怒りが噴出。区役所に来て説明を求める人が相次いだほか、“早い者勝ち”の予約方法にも疑問の矛先が向けられた。市内の高齢者には、「いつになったら接種できるのか」との不安が広がった。

 山科区の男性(81)は午前8時過ぎ、区役所を訪れた。だが、予約はコールセンターへの電話やインターネットなどに限られ、区役所では受け付けていない。携帯電話を持っていないため、職員に案内されて区役所内の公衆電話へ向かった。10円玉を積み上げ、3時間半にわたってかけ続けたが、「全然つながらん。あかんわ」と受話器を置いた。「結局、早い者勝ち。学区ごとに会場や時間を決めるなどの方法はなかったのか」と疑問を呈した。

 市は区役所が「密」になることを防ぐため、ホームページなどで区役所では予約ができないことを事前に周知。この日は朝から職員が入り口に立って、チラシを手渡した。市によると、目立ったトラブルはなかったというものの、困り果てて各区役所を訪れる高齢者が続出した。男性のように、「役所窓口や相談のコールセンターが区役所でも予約できると言っていた」という市民も複数おり、市医療衛生推進室は「誤解を招く説明をしたのなら申し訳ない」と釈明した。

 午前10時に右京区役所を訪れた女性(80)は窓口で予約できないことを知り、役所内のソファに座って携帯電話を掛けた。だがNTT西日本が発信制限したこともあり、聞こえてきたのは「しばらくたってから、お掛け直しください」の音声。「朝からずっとこれや。『しばらく』っていつまで?」と、携帯の画面に感情をぶつけた。

 インターネット予約も同様だった。伏見区役所に足を運んだ男性(75)は午前9時過ぎ、ネット予約を勧められ、職員に教わりながらスマートフォンを操作した。だが、この時点ですでにネット予約の枠は埋まっていた。

 職員は「次の予約もありますから」と申し訳なさそうに伝えたが、男性は「どうせまた、つながらへんのやろ」とぽつり。

 市は予約開始に備えてコールセンターを300回線に倍増し、前日にはワクチン接種を行う医療機関を全て公表する方針を発表。市民の不安を払拭(ふっしょく)しようとしたが、高齢者の混乱は収まらなかった。

 午後、右京区役所を訪れた男性(75)は、かかりつけ医に相談したところ8月以降になると伝えられ、集団接種に切り替えることにした。しかしこの日午前中、予約の電話はつながらなかったという。「国も京都市も7月末までに接種できるってうそじゃないか。やることをやらずに五輪と聖火リレーはしっかり開催しますって、もう言葉も出んわ」。区役所を出ると、暗い空から大粒の雨が降っていた。

区役所を訪れた高齢者にワクチン接種の予約方法を伝える職員(20日午前9時、京都市右京区役所)

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