ビジネス書に訊け! 第150回 「副業」の未経験者がまず起こすべきアクションとは?

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悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、副業を考え始めた人へのビジネス書です。

__■今回のお悩み
「副業などの新しい働き方を知りたい」(31歳男性/営業関連)__


僕の文筆家としてのスタートラインは音楽ライターで、活動し始めたのは、広告代理店に勤めていた30年近く前。幸いにも軌道に乗ることができ、以後は会社員とライター、二足の草鞋を履いていたのでした。

それから1年くらい経ったころ、実質的なナンバー2だった営業本部長に呼び出されました。

「お前、アルバイトしてるだろ」
「え、いや……はい」

ものを書きたかっただけなので、アルバイトという認識はなかったのですけれど、しかし原稿料を得ていた以上はそういうことにはなるのかもしれません。ということで、認めざるを得なかったのでした。

「で、どうすんだよ?」
「どうする、といいますと?」
「だからぁ、うちはアルバイト禁止なんだよ。バイトを辞めてうちに残るか、そっちを続けてこの会社を辞めるか、どっちにするかってことだよ」
「では会社を辞めます」
「じゃあ、きょうで最後な。荷物まとめろ」

役職のついた正社員だったのに信じられない話ですが、あの時代の零細企業では、似たような話はごろごろしていたのではないだろうかとも感じます。

いずれにせよ、そういう時代を見てきたからこそ、副業を奨励する企業が増えてきた現代の状況を見ると、「世の中も変わったよなぁ」と実感せざるを得ないのです。

副業を奨励することの裏側には「もうこれ以上は面倒を見られないから、あとは自分で生きていってね」という意図があるわけですから、一概に「いいこと」だとはいえないかもしれません。

とはいえ時代が変わった以上、生き抜く力はつけておきたいところ。長い目で見て、それは間違いなく力になりますからね。

十分な「準備」をする

副業には十分な準備が必要です。準備さえしておけば、副業が解禁された、あるいは会社を辞めたときに、すぐにお金を生み出せるようになります。(「はじめに」より)

『副業力 いつでも、どこでも、ローリスクでできる「新しいマネタイズ」』(染谷昌利 著、日本実業出版社)には、このように書かれています。見逃すべきでないのは冒頭の部分、すなわち「準備」の重要性です。

そして、このことに関連して著者は、自分自身の「信用度」や「影響力」を向上させる点にフォーカスし、すぐにでもやっておきたい4つの行動を紹介しています。

行動(1) 勉強会やイベントに参加する(20ページより)

会社という小さな世界から一歩踏み出し、社外の勉強会などに参加することも、視野を広げ、新たな人脈を構築するための有効な方法。そこで、興味ある分野の勉強会があれば積極的に参加すべきだといいます。

行動(2) 「情報発信力」を鍛える(21ページより)

ブログやSNS、YouTubeなど、個人が気軽に使えるツールを活用して情報発信力を高めておけば、自分が商品やサービスを開発した際などに、直接、その商品を求める顧客そうに情報を届けられるということ。また、ブログ運営で生計を立てるなどの手段もあります。

行動(3) 自分の「趣味」がお金にならないか調べる(21ページより)

現代では、趣味をお金にするための多くの仕組みが用意されています。まずは自分の趣味が世の中に求められているかを調べ、もしそれを売買できるようなサービスがあれば、売ることを意識して在庫を増やしてみるという手段も。

行動(4) 自分を中心とした「コミュニティ」を運営する(22ページより)

ここでいうコミュニティとは「自分がリーダーになる気軽なグループ」。リーダーが理念(やりたいこと)を語り、ひとつ上のステージに行くために必要な情報(商品)を提供することで、みんなせ成長しながら楽しい「場」を生み出せるというわけです。

やはり、準備は不可欠なようです。しかし、そもそも副業に対する考え方だって人それぞれ。

「本業とずれたこと」も選択肢に入れる

一般的なのは、営業は営業、デザイナーはデザイナーというように、自分の得意分野を別のところでも生かしていくパターンではないでしょうか? でも『「複業」で成功する』(元榮太一郎 著、新潮新書)の著者は、本業と副業で「少しだけずらしたこと」をやるのもいい選択だと主張しています。

マーケティングの担当者であるなら、本業とは違った分野のマーケティングをやるだけでも意味があります。
弁護士ドットコムのマーケテイング担当者が、食べログのマーケティングをやってみたとすればどうでしょうか? 両者のユーザーの動きの性質の違いに気がつき、それを次の戦略に生かしていくことなども可能になるはずです。(45ページより)

ちなみにその一方、本業とはまったく違った仕事も“アリ”だと考えているそうです。その場合は失敗のリスクも高いでしょうが、思わぬ成果を上げられる可能性もあるので、選択肢から消し去る必要はないというのです。

たとえば著者の知人は、ビジネスパーソンとしてのそれ以前の人生で接点がなかった飲食店の現場を知りたいと思い立ち、つながりのない飲食店にアルバイトとして入ったのだとか。

その過程においては、年下の先輩にどやされたりもしたといいます。つまり、武者修行に近くつらい部分も多かったということ。しかし、そうした体験もチャレンジとしては無駄ではないはず。

事実、その人はのちに、経営者として会社を情報させるなど活躍しているのだそうです。

あるいは、対価を得ることを目的とせず、ボランティアやNPO法人で活動する人も増えているようです。

副業に対するスタンスは人それぞれでいいわけですが、収入だけを考えるのでなく、目的意識をもって、自己成長につながる仕事や本業にプラスになると考えられる仕事を選択するのが理想ではないかと私は思います。(47ページより)

これからの時代は「ひとつの会社で一生勤め上げ、他の仕事をしたことがない」という人は減っていくはず。副業がスタンダードになっていくのは間違いないので、「自分が副業になにを求めているか」をよく考え、それに見合った道を選択すればいいということです。

会社に勤めながら「起業」を経験する

ところで、副業について考えをまとめていくうちに、起業に対する関心が高まっていくということも考えられます。そこで、起業に関連した書籍もご紹介しておくことにしましょう。

『初年度から1000万円売り上げる ゼロからの起業術』(福山敦士 著、大和書房)がそれ。スタートアップ経営者が、企業を考えている人に向け、「これは知っておいてほしい」ということを中心にまとめたものです。

起業には大がかりなイメージがありますが、注目すべきは著者が「起業前に社内起業、もしくは社内新規事業の立ち上げを経験しておくことは大きなメリットになります」と強調している点です。

身近な人に協力をお願いするという動作は独立してもずっと続いていくことです。他人からのリソースをもらい、自分×何かを生み出すというのがビジネスを考えるうえで大事です。その面では、独立した人も社内にいる一個人も動作は一緒です。社内での誰か×自分ということで何ができるか。それを考える訓練と思ってもらえればいいと思います。(20ページより)

たとえば仕事を発注する際には、外に目を向けるよりも中で探したほうが早いというケースがあります。

外だけで探してしまうと「いない」「高い」というような問題に直面し、先送りになったり、アイデア自体が消えることも考えられるわけです。しかし中だと逆で、「こうしたらできるんじゃないか」という話になりやすいもの。

将来の独立後は、その都度コストが発生する話になります。そのため、会社員時代に「自分×○○」というアイデアでなにか仕事を動かせるのは、とてもお得なことだというのです。

IT業界では、実際に社内起業を経て、独立しているという人は多くいます。もし、会社の風土がそれを後押ししてくれるのであれば、社内起業にチャレンジすることはとてもおすすめです。(21ページより)

社内起業で下地をつくってから本格的に起業するのであれば、たしかにリスクは軽減できそうです。


冒頭で触れた僕のケースは、「趣味が仕事になっていった」というパターンではないかと思います。以後、その会社を辞めてからも紆余曲折ありましたが、やりたいことをやってみてよかったとは思っています。

だからこそ、副業や企業を目指したいのなら、まず「自分はなにをしたいのか」について熟考することが大切なのではないだろうかと感じます。

印南敦史