運動も日焼けも嫌!から登山専門店オーナーに「登り詰めた」理由【ふくいのそと遊び】

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運動嫌いの少女は、日本屈指の難関コースで知られる雪の剱岳を登るまでになりました(手前が筆者、2枚目も)=2018年11月

 この度「そと遊び」コラムの一端を担わせていただくことになりました、服部佐和子(はっとりさわこ)です。福井市田原で遊山行(ゆさんこう)という登山専門店をやっています。

 山のお店をしているくらいだから、子どものころから体育が得意で体を動かすことがなにより大好き!な人間を想像されるかと思いますが・・・ すみません、まったく違うんです。

 子どもの頃を思い返すと、体育の授業時間は忍耐を学ぶ時間。ドッジボールなんて恐ろしいばかり。ボールを自分にむけて投げられるのが恐怖なのはもちろん、どうして友だちにボールを投げつけなくてはならないのか。運動会ではヨーイドンのピストルの音に「ひぃぃっ」と驚いてスタートラインから後ろに跳びすさったり(もちろん走り出しても遅い)。

 夏の林間学校では、泊まらされたコテージ(泊まったではありません。泊まらされたとしか思えませんでした)に靴を脱いで入ったとたん足裏に感じたザラッとした砂の感触に悪寒がし、湿り気のぬけきらない寝具に嫌々くるまりながら、明日は家に帰れる、寝てしまえば起きたときには帰れるんだからと自分に必死に言い聞かせて夜をすごしました。

 小学校の修学旅行では初日の夜に身体のいたるところが原因不明のはげしい痛みにおそわれました。不安と痛みでぽろぽろ涙を流している私をみて級友も先生も大慌て。ところが原因は「人生初の筋肉痛」。自宅が小学校に隣接しており長時間歩いたことがないのに修学旅行では朝から丸一日あちこち歩き回ったことが原因でした。

 大学入学後にも体育の時間があることに怯えましたが、選択体育で卓球(というよりピンポン遊び)だけしていればよいと分かったときには心底ホッとしました。

 本を読むことがすきで愛読書は「赤毛のアン」シリーズと「若草物語」。小学校のクラブ活動は手芸クラブと園芸クラブ。中学校ではフルートに憧れて吹奏楽部に入部しましたが、基礎体力作りでランニングや腹筋などのトレーニング必須ときいてすぐにパーカッションに変更(吹かないから各トレーニングが免除)。

 ピアノや琴、茶道のお稽古にいそしんで、リバティプリントで自作したワンピースを着てよろこんでいる。そんな10代でした。

 

 まだ山の話が出てこないな・・・とお思いの皆さん。

 そうなんです。私が山に登りはじめるまでは、まだまだ長い道のりがあるのです。

 兵庫県三木市で生まれ育ち、学生時代の京都で同級生だった夫(越前市出身)と出会い、福井県越前市に嫁いできました。

 結婚式、新婚旅行を経て目まぐるしい時期をすぎたころ、スーパーからの帰り道の日野川堤防で、川に鴨がたくさんいる!と驚いて車を停めました。車から降りると爽やかな風に草がゆれて、とおくに目を向けると新緑の山がきれいで。「山の緑がきれいだな・・・」と思うと同時に「山の向こうにも山?!」。しかも山、山、山・・・と織りなすとおく向こうには白い山。

 この初夏を思わせる5月の陽気に白い山!まさか雪の山が??と驚きました。と同時に、もしも鳥になれるのだったらあの白い山まで翔んでいきたいと思いました。

 これが私が初めて「山」というものに魅かれた端緒なのですが、当時はまさかあの白い山に白山という呼称があるとも知らず、まして多数の登山客を迎える人気の山だとも。そして白山に限らず、山には登山道があるということすら知りませんでした。

 そして日野川堤防で白山を白山とも知らずに眺めていたころから10数年が過ぎてやっと、初めての登山にいたります。

 こんな私ですが、ひとたび山に足を踏みいれてしまったら。

 登るたびに山がたのしくなって。結果、多くの変化が起きました。

例①    日焼けなんてとんでもない!着物が似合うためにも白肌命!だったのが、汗をふきふき高い山に登るのが嬉しくて、もう日焼けは仕方ないよねー、と開きなおりました(標高が高いほど紫外線はつよくなります)。 例②    お天気がいい日は仕事だろうが友人との先約があろうが山に行きたくなる(そして本当にドタキャンしてしまう)。 例③    なので先の約束をしなくなる(だって約束の日にお天気などの条件がよくて山に行けなかったら困るから)。 例④    長いお休みは家族とゆっくり過ごしたいものですよね(私の場合はせっせと実家に帰省していました)。なのに長いお休みこそ山に行ってしまいます(しかも予備日とかいってお休みすべてを山で消費)。 例⑤    いろんな山を元気に歩くためにはトレーニングが必要なので、足元に重りをつけて家のなかをうろついたり、歯磨きしながらスクワットしたりと不審なうごきをするようになる。 例⑥    「山は待ってくれる」と言いますが、山がすきになると「山は待ってくれない」と思うようになります。お天気が今日はいいから。あの花が今だけ咲いているから。雪の状態が今朝はいいから。何より、今日より若い日はないから来年の今もこの山このルートを行けるわけじゃないから・・・等々。

【 結論:山がすきになると山がダントツの最優先になります 】・登山道がある山でも道迷いは起こります。・熱い日中に里山を歩きまわれば熱中症の危険度は増します。・蜂やアブ、マダニに刺されることも珍しくありません。・わざわざ熊の生息地にお邪魔しにいくので遭遇する可能性があります。・この時期はヘビにもよく出会います(私はヘビは苦手ではないのですが、苦手な方も多いですよね。そして苦手な人のほうがヘビによく気付くような気もします)。・冬は日常生活でも十分寒いのに雪山はもっと寒くて危険も夏山に比して多いです。それでも迷いなく春夏秋冬、一年をとおして山にルンルンと向かいます。  漫画「スラムダンク」を読んでバスケットボールを始めたり(古いっ、て言わない!実は最近お店に来てくれる大学生から貸してもらって初めて読みました。おもしろい!!)「3月のライオン」を読んで将棋をやりたくなったり(これも漫画です。映画にもなりました。おもしろくて考えさせられます。)きっかけは意外で小さなところにあるものだと感じます。 このコラムを読んでくださって、そして以降も読んでくださる皆さま。 今回は私の自己紹介もかねて「山はハマると人が変わりますよ!」ということをまずはお伝えしておきたいと思います。 もう山にどっぷりな方はさておき、なんだか山登りも楽しそう、登ってみるのもいいかしらん・・・ていう方がいらっしゃいましたら、声を大にして言いたいのです。 「山はたのしいです。楽しくて愉しくて。すっかりハマって降りられない電車に乗ってしまった状態になるかもしれませんよーー。」