脱走ヘビの捜索打ち切り…人的被害なら飼い主に賠償責任 過去に1000万円判決も

地域住民の不安は募るばかりだ

打ち切って、果たして大丈夫なのか――。横浜市戸塚区のアパートで飼われていた環境省指定の特定動物アミメニシキヘビが、今月6日に脱走した事件で、神奈川県警戸塚署は21日午後4時をもって捜索打ち切りを発表した。

岡本学副署長は「有力情報がなく、中止はやむを得ない。新たな目撃情報などがあれば再開もあり得る」と話している。消防や横浜市は当面の間、捜索を続けるが、警察による捜索は、周辺住民の不安は解消されないまま、打ち切りとなってしまった。

脱走していたアミメニシキヘビは体長3・5メートル、体重13キロ。署によると、飼い主の20代男性から「ヘビが逃げた」と通報があった6日から計16日間にわたり、延べ約270人の警察官を投入。災害時にがれきの下の行方不明者を捜すためのファイバースコープを使うなどし、アパート周辺を調べた。ほかにも市職員や消防団員が捜索に当たったが、ついに見つかることはなかった。

動物ジャーナリストの佐藤栄記氏は「アパート近くの川を伝って、上流や下流に移動した可能性は否定できない。また、都市河川は捜査員の盲点になるような横穴も多く、そういった場所に潜んでいる可能性もある」と指摘。多少の絶食をしたところで死ぬことはなく、今も生存している可能性が高い。

そうなれば、そのうち腹をすかせたアミメニシキヘビが何らかの捕食行動に出る可能性がある。その際に人が襲われる被害が出る可能性はゼロではない。万が一、人的被害が出てしまった場合は誰が責任を負うのか? 弁護士の横粂勝仁氏はこう解説する。

「何かあった場合の責任は、飼い主が刑事、民事ともに負うことになります。今回、飼い主は特定動物であるアミメニシキヘビをガラス製ケージに飼うことで飼育許可を得ていたのが、正式な手続きなく木製ケージに変更したことは重過失。もし、人的被害が出た場合、刑事罰的には『重過失致死傷罪』で5年以下の懲役あるいは禁固、または50万円以下の罰金になります」

しかし、刑事罰だけで済むわけはない。民事でも不法行為の損害賠償を請求されることになり、ケガの治療費や通院費、慰謝料や休業損害補償などを払うことになる。

さらには捜索費用を請求されるケースもあるという。

「41年前に宮崎県延岡市でコブラが脱走したときは、延岡市が飼い主に対して1000万円の損害賠償請求をして勝訴した判例があります。今回のケースも飼い主の重過失が認められておかしくないので、横浜市が損害賠償請求をする可能性は捨てきれない」

いずれにしてもアミニシキヘビが見つかるまで周辺住民の不安は消えることはない。さらに飼い主も被害が出ないことを祈って、胃が痛い日々が続きそうだ。

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