避難所、ワクチン接種会場と重複 「災害時対応」悩む長崎県内市町 自宅療養のコロナ感染者はどこに

ワクチン集団接種会場となる五島市中央公園サブ体育館は指定避難所にもなっている。4月には模擬訓練が行われた

 平年より20日も早く梅雨入りした長崎県。各自治体は、大雨や台風の際に開設する避難所が新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場と重複するケースの対応に頭を悩ませている。自宅療養中の感染者や濃厚接触者をどこに避難させるかという難題とも向き合う。
 五島市三尾野町の市中央公園サブ体育館。6月下旬~7月の毎週末、1日当たり300人の集団接種を予定しているが、災害時の指定避難所でもある。市は「もし避難所が開設されれば、集団接種は延期せざるを得ない」とする。とはいえ、政府が高齢者接種完了の目標を7月末と掲げている上、2回目を3週間後に接種する必要がある。担当者は「あまり接種日程の間隔を空けるわけにもいかない」と不安を隠さない。
 5月26日~8月15日に28カ所で集団接種を予定する佐世保市。このうち4カ所はいずれも学校で、浸水や土砂災害に備えて最初に開設する避難所38カ所に含まれている。開設時期が重なった場合、市はワクチン接種は体育館、避難は校舎-と分けることにした。
 対馬市も一部が重複。担当者は「避難所を開設するのは大規模な災害が予想される時。(接種会場を避けて)別の避難場所を設けるのは考えにくい」と話す。
 長崎市は集団接種会場の全5カ所が指定避難所。ただ、いずれも大小さまざまな部屋があるため、接種は広めのホール、避難は小規模な会議室-といった使い分けを検討中。一方で「台風などの場合、そもそも集団接種に来てもらうのが危険」として延期もあり得るという。
 県内各市町に状況を照会している県危機管理課の担当者は「緊急性がある場合は『接種より避難』。接種会場のレイアウトはそのままにして、避難所を開設してもいいのではないか」との見解を示す。

 自宅にいる感染者や濃厚接触者に避難指示が出た場合の検討も進む。
 長崎市は、対象者への連絡や移動の手段を巡り協議を続けている。差別防止などの観点から「対象者が特定されないような配慮が必要」とし、指定避難所以外の施設を確保したい考えだ。在宅の感染者よりも数が多い濃厚接触者の避難について、佐世保市はプライバシーの確保や感染防止を課題に挙げる。「全てをクリアする避難場所を選定するのは難しい」として、県に相談している。
 県危機管理課は「一般の避難者とは一緒に避難させない」との対処を勧める。その上で避難先として、陽性が明らかな自宅療養者は宿泊療養施設に、濃厚接触者は避難所以外の別の公共施設に-が望ましいとしている。
 同課担当者は「県民には何より命を守るための避難行動をとってほしい。各市町は避難所を安全安心な環境にする必要がある」と話す。


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