F1フレキシブルウイング監視強化のタイミングにメルセデスらが強い不満「バクーで不当なアドバンテージを許すことになる」

 メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフは、フレキシブルウイング問題についてのFIAの対応が生ぬるいと示唆し、新しい試験の導入が遅いことで、問題となるウイングを装着するチームへの抗議が提出される事態になるかもしれないと主張した。

 スペインGPの週末、メルセデスのルイス・ハミルトンは「レッドブルはストレートでとても速い。マシンのリヤに曲がるウイングがついていて、そのウイングで少なくとも0.3秒は稼いでいる」と発言した。

 スペインGP終了後の5月11日、FIAは全チームに対して技術指示書を送付、6月15日からたわみを調べるための新たな荷重テストを導入することを通知した。FIAはまた、オンボードカメラを利用して走行中のリヤウイングの曲がり具合を監視するという。新テストは第7戦フランスGPから実施されることになり、モナコGP、アゼルバイジャンGPには適用されない。

 ウォルフは、実施をフランスGPからに決めた理由が理解できないと批判、その間に利益を得るチームがあることで、ライバルチームから抗議が提出される可能性があると主張した。

「導入が遅れることで、法的な取り締まりがなくなり、それによって抗議の可能性が出てくる」とウォルフはモナコGPの週末に語った。

「混乱した事態になり、決定が下されるまで数週間かかる可能性がある」

「これまで何度か、複雑な再設計を遅らせざるを得ないケースを見てきた。連戦の場合や、2週間後というのでは、期間が短すぎて対応できるチームはない」

「だがバクーまでは4週間あった。フレキシブル・リヤウイングの影響が最も大きいであろうサーキットに向けて、4週間以内にリヤウイングの強化を行うことができないというのは、理解できない」

「それによって曖昧な状態が続く。技術指示書では、リヤウイングが過度に動いていると判断されているのだ」

「そのため、問題視されるウイングを使用するチームには、抗議が出されるかもしれない。その件は国際控訴裁判所に送られる可能性がある。本当は誰もそのような状況を求めてはいないのだが」

2021年F1第5戦モナコGP トト・ウォルフ(メルセデスF1チーム代表)

 ウォルフは、現状を考えれば、メルセデスは逆にウイングを柔らかくする方向に変更することが可能であるとも発言した。

「我々はウイングをモディファイする必要がある。柔らかくする方向にだ。我々のウイングは非常に固く、動いてはならないと定めるあの第3.8条に準拠しているのだ」

「新しいテスト導入は、解決法としては不完全な形であり、それによってチャンスが与えられる。全体的に規制が弱められ、将来はそれがさらに曲げられる可能性すらある」

 ウォルフは、2020年夏の時点でフレキシブルウイングに関する問い合わせをFIAに行っていたが、返答を得られなかったとして、それについても不満を示している。

 マクラーレンのチーム代表アンドレアス・ザイドルも、ウイングの取り締まり強化が遅いことが「受け入れられない」と語った。

2021年F1第5戦モナコGP アンドレアス・ザイドル(マクラーレンF1チーム代表)

「FIAが技術指示書を発行したことを我々は歓迎し、基本的な内容には満足している」

「だが、実施のタイミングには強く反対する。我々の考えでは、ある行為によってアドバンテージを得ているチームがおり、それは規則に明らかに反する行為である」

「彼らはすでに数戦にわたりそのアドバンテージを利用している。そのことに当然のことながら我々は不満を感じる」

「それにもかかわらず、彼らがさらに何戦か、そのアドバンテージを利用することを許すということには、我々は強く反対し、FIAと協議を行っている」

「FIAが強い態度を示すことに期待する。我々にとっては、これは受け入れられないことだ。レギュレーションを守っているチームが圧倒的に不利になっているのだから」

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