【オークス/有力馬アナライズ】ソダシの「距離不安説」はナンセンス、一方で桜花賞3着以下の馬は軽視

東京GI5週連続開催の3週目は第82回オークス。今年はデビューから5戦無敗で桜花賞を制した白毛馬・ソダシが、昨年のデアリングタクトに続く無敗の牝馬二冠を目指す。

舞台はどの馬も初経験となる東京芝2400m。そこに当然、波乱要素はあり、昨年も2着に7番人気のウインマリリン、3着には13番人気のウインマイティーが突っ込んで、3連複は1万5020円、3連単は4万2410円の万馬券となった。

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■桜花賞4着以下が巻き返すのは例外

過去10年を振り返ると、やはり強いのは前走・桜花賞組で【7-4-5-63】。続く忘れな草賞組は【3-0-1-7】、フローラS組は【0-5-3-37】と、桜花賞組の数字が突出している。

昨年はデアリングタクトが、3年前の2018年にはアーモンドアイが桜花賞→オークスの二冠を達成している。桜花賞は世代トップクラスが集う牝馬クラシック第1戦とあって、このローテーションが強いのは当然と言えば当然か。

しかし、やみくもに桜花賞組を狙えばいいわけではない。過去10年のオークス3着以内の前走を改めておさらいしておく。

過去10年、桜花賞組による1〜3着独占は、じつは先に挙げた2018年しかない。同年は桜花賞の上位馬が揃って出走し、別路線組に付け入る隙を与えなかったと言えるのではないか。

桜花賞12着から巻き返した17年3着のアドマイヤミヤビは、桜花賞で痛恨の出負け。桜花賞で単勝1倍台の人気を裏切り9着に大敗した115年2着のルージュバックは、桜花賞では絶望的などん詰まりのため力を発揮できなかった。

例外と言えるのは13年に桜花賞10着からオークス戴冠のメイショウマンボのみで、同馬は減り続けていた馬体重の回復があったのも勝因と言えるだろう。つまり、桜花賞で大きく崩れた馬の巻き返しは、よほどの敗因がないかぎり、過去10年では発生していないことになる。

■着差と距離適性で取捨を見極める

一方、桜花賞組の独占がなかった近年、例えば2020年は桜花賞2着のレシステンシアが、19年は桜花賞優勝のグランアレグリアがNHKマイルCへと向かっている。つまり、このように“空席”が生まれたときに別路線組の台頭があるというわけだ。

今年は桜花賞2着のサトノレイナスが日本ダービーへの参戦を表明。よって過去の傾向から、別路線組が上位に食い込む可能性は十分にあると見ていい。

別路線組の検討に入る前に、まずは桜花賞組について考察してみたい。桜花賞とオークスで連続好走するには、勝ち馬から離されていないことが基本条件と言える。

昨年の桜花賞3着のスマイルカナは勝ち馬からコンマ5秒差、同じく4着のクラヴァシュドールはコンマ7秒差だったが、それぞれオークスでは16着と15着に沈んでいる。なおクラヴァシュドールはオークスで3番人気の支持を集めていた。

また、明らかに距離延長がマイナスの馬も連続好走も難しい。2019年桜花賞2着のシゲルピンクダイヤ、17年桜花賞1着のレーヌミノルは、ともに父ダイワメジャーで、血統面からも不安の要素があった。この他、16年桜花賞3着のアットザシーサイドは1400mを勝ち切るスピードがあり、15年桜花賞1着のレッツゴードンキはマイル戦で逃げて快勝できた馬。

スピード寄りのタイプにとっては、東京芝2400mは過酷な条件となって立ち塞がる。

■ソダシの「距離不安説」はナンセンス

これを今年のメンバーに当てはめると、桜花賞優勝のソダシは戦績からは当然、条件クリア。父クロフネの産駒が芝2000m以上の重賞で【0-7-8-110】というネガティブなデータもあるが、そもそも距離不安の馬をタフな函館芝1800mの新馬でデビューさせるわけがなく、続く札幌2歳Sを制している時点で、「距離不安説」を唱えるのはナンセンスと言える。

気になるのは前半800m45秒2のハイペースだった桜花賞で、無理なく3番手を追走していた点。鮮やかすぎる先行抜け出しVは、いかにもスピードタイプと言ったところで、後々は芝2000mまでがベストの印象を受ける。

ただ、おそらくマイル~2000mがベストだったであろうアーモンドアイが、オークスだけでなくジャパンCを2勝しているように、時計の速い東京芝コースは距離適性の差を相殺できる舞台でもある。

逃げ馬不在でスローペースが濃厚の今回。折り合い面で不安はないものの、ソダシがハナに立ってしまう恐れはあり、初めての展開に馬が戸惑う可能性は否定できない。それでもレースセンスと適応力は高く、まず大崩れはないと見た。

コロナ禍で明るい話題を振りまいてくれる奇跡の白馬。ここはデータ度外視で信じてみようではないか。

■桜3着のファインルージュには黄信号

一方、ソダシの強敵と見られた桜花賞2着のサトノレイナスが不在で、3着以下はどうか。まず4着のアカイトリノムスメはコンマ2秒差なら及第点で、折り合い面も申し分なく、距離延長に不安はない。

ここまで東京3戦3勝のコース実績も魅力で、相手筆頭に推したくなるが、クイーンCは展開次第で着順が入れ替わりそうな内容。桜花賞は理想的なレース運びで完敗。クイーンCから別路線を経てオークスへ駒を進めてきた馬との力差は感じられず、ここは押さえの評価に留めてもよそうだ。

桜花賞でアカイトリノムスメにハナ差先着の3着ファインルージュは、芝1200mでデビューし芝1400mの未勝利を快勝しているように、スピード寄りの印象を受ける。こちらも押さえ、またはオッズ次第でバッサリと切り捨ててもいいだろう。

5着のアールドヴィーヴル以下はコンマ7秒差以上。最後方から流れに乗れなかった6着のククナは押さえる必要はあるが、いずれにせよ、今年は桜花賞敗退組を軽視し、別路線組から穴馬を発掘するべきと見た。

後編「穴馬アナライズ」では、別路線組から穴馬3頭を紹介する。

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著者プロフィール

山田剛(やまだつよし)●『SPREAD』編集長
アスリートの素顔を伝えるメディア『SPREAD』の編集長。旅行・アウトドア雑誌のライターを経て、競馬月刊誌「UMAJIN」の編集長として競馬業界へ。その後、Neo Sports社にて、「B.LEAGUE」「PGA」「RIZIN」等のスポーツ×ゲーミフィケーション事業に携わり、現在に至る。競馬は、1995年マイルCSの16番人気2着メイショウテゾロの激走に衝撃を受けて以来、盲点となる穴馬の発掘を追求し続けている。

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