7人家族、借入800万、来年夫は退職。火の車の家計をどう立て直す?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、55歳、専業主婦の女性。夫と5人の子どもの家庭を支えてきた相談者。家計は慢性的に赤字で借り入れは800万。来年には夫が退職を迎えるため、今後どうやって生計を立てていけばいいか悩まれています。FPの氏家祥美氏がお答えします。

主人は来年定年を迎える63歳、私は専業主婦の55歳、29歳の長男を頭に5人の子どもがおります。27歳の次男は別居ですが、現時点で定職を持たず収入がありません。三男(工場勤務)は同居しておりますが、この度中古のマンションを購入する予定です。また、四男は、大学2年生で他県に一人暮らしでバイトと奨学金で頑張っています。娘は高3、来年には専門学校へ進学の予定です。

主人の収入は60歳をピークに右肩下がりの給料で、貯蓄どころか家計はいつも火の車です。節約出来る所はしていますが、冠婚葬祭があったりで借り入れしたりしています。今後どうしたら良いでしょうか? 今のところ、主人は通院だけで介護は必要ありませんが、この先どうなるかは分かりません。

【相談者プロフィール】

・女性、55歳、専業主婦、既婚

・同居家族について:

夫(63歳)は外食産業で手取り16万円

三男は工場勤務で家計には毎月3万5,000円入金してもらっています。

長女(高3)

・子どもの人数:5人(17歳、19歳、21歳、27歳、29歳)

・住居の形態:社宅扱い(退職するまで)

・毎月の世帯の手取り金額:19万5,000円

・年間の世帯の手取りボーナス額:95万円

・毎月の世帯の支出の目安:20万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:5万円

・保険料:3万円

・通信費:4万円

・車両費:2万円

・お小遣い:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯蓄総額:0円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:800万円


氏家:こんにちは。ご相談ありがとうございます。5人のお子さんを育ててまだ教育費もかかる中、来年にはご主人が定年退職を迎えるため、家計が心配というご相談ですね。いま、声を出してもらって本当に良かったです。厳しい言い方になって申し訳ないのですが、はっきり言うと、小さな節約などではどうにもならず、これ以上の先送りはできない状況です。家族で協力しながら、いまの状況を乗り越える策を一緒に考えていきましょう。

一家の状況を整理すると…

最初に、ご家族の現在の状況から確認させていただきます。

・ご主人(63歳):外食産業で勤務中ですが、60歳以降給与が下がり、現在は手取り16万円ですね。現在、通院中で定年後の仕事は特に決まっていない状況です。現在ご家族は社宅に暮らしているため、来年退職したら社宅を出なくてはなりません。

・相談者(55歳):専業主婦としてご主人と5人のお子さんの暮らしを支えています。

・長男(29歳):すでに独立して別居しています。

・次男(27歳):別居中ですが、定職を持たず収入が無い状態です。

・三男(21歳):同居して、ガラス工場に勤務した給与から生活費を毎月3万5,000円入れています。社宅に代わる住まいとして、中古マンションを購入する予定です。

四男(19歳):大学2年生。バイトと奨学金で、秋田でひとり暮らしをしています。

長女(17歳):高校3年生。来年専門学校に進学予定です。

つまり、長男、次男、四男は外に出ているため、現在は、ご主人とご相談者さん、三男と長女の4人暮らし。ご主人と三男さんの給与で家計が成り立っている状況です。

4人暮らしの家計は、夫と三男の収入が支え

続いて、4人で暮らす現在の家計の状況を確認していきましょう。

手取り収入:年間329万円(月々19万5,000円×12カ月=234万円、ボーナス95万円)
毎月の支出:毎月20万円と書かれていますが、住居費9万円、教育費5万円等を含めると31万円になります。31万円×12カ月=372万円

このほかに毎月貯蓄4万円と書かれていますが、支出の方が多い状況なので、貯蓄しては別のところから取り崩している状況になっていると思われます。

夫の退職で、来年からは月額22万円が不足する

家計の柱であるご主人が退職をしてしまうと現在の暮らしが成り立ちません。21歳の三男さんはまだそれほど収入も多くないはず。そのなかで、毎月3万5,000円を家計に入れていることも立派だと思いますが、今後住宅ローンの返済が始まるとなると、自由になるお金はかなり減少するはずです。これから働き、遊び、成長し、いずれ自分自身の家庭を築いていくことを考えると、三男さんに負担が重くのしかかるのは避けたいところです。

現在の生活費が31万円として、仮に住居費9万円を三男さんが負担すると仮定した場合、あと22万円が不足します。ご主人の会社に退職金があるかどうかはわかりませんが、仮にあったとしても、現在、貯蓄+投資の総額=100万円、負債の総額=800万円という状況なので、退職金を老後のあてにすることはできない状況です。

家庭内に働き手を増やすことを第一に考えましょう。

夫の退職後は、妻の年金支払いが始まる

これまでご相談者さんは、ご主人の被扶養者として、年金保険料や健康保険料の支払いを免除されてきたと思います。ところが、ご主人が来年、会社を退職してしまうと、「会社員の妻」ではなくなるため、妻であるご相談者さんは、今後60歳になるまで自分で国民年金保険料を支払うことになります。令和3年度の国民年金保険料は、月額1万6,610円です。

健康保険に関しては、状況にもよりますが、同居する三男さんの健康保険に加入することもできるかもしれません。

夫、妻、子、家庭内の働き手を増やして助け合う

このような状況をふまえて、来年以降、誰がどのように働くかを考えていきましょう。三男さんはすでに働いているので、今後は、ご主人、ご相談者さん自身、現在別居中の次男さんが家計の担い手の候補となります。

(1)ご主人の再就職
63歳での定年退職ということで、次の再就職をいままでと同条件で探すのは困難かもしれません。ハローワークで失業給付の申請をした後も、できれば、根気よく次の仕事を探し、再就職先を探してほしいです。早期に再就職先が決まった場合には、「高年齢再就職給付金」もしくは「再就職手当」を受けられる可能性があります。再就職をするとそこで失業給付はストップしますが、新たな給与に加えてこうした手当てが加算されるので、手取り収入を増やすことができます。

(2)妻の再就職
長い間、家族のサポートに専念してきたがご相談者さんですが、来年は末っ子の長女さんも高校を卒業して専門学校に入ります。家事を家族に少しずつ協力してもらうようにして、近場でできそうなパートタイムの仕事から始めてみてはいかがでしょうか。久しぶりにお金を稼ぐ仕事に出かけることは大変に感じるかもしれませんが、これから先の人生や家族の状況を考えると、いまが頑張り時です。家事や子育ての経験を生かせる仕事も世の中にはたくさんありますから、まずは始めやすい仕事を探してみましょう。

(3)次男の協力
現在、定職を持たずに別居しているという次男さん。定職を持たずにひとり暮らしというのも、いまのコロナ禍では大変なこともあるでしょう。もし可能であれば、家族の現状を伝えた上で、実家に戻ってきて家計に協力してもらえないか、提案をしてみてはいかがでしょうか。同居して、アルバイトなどをしながら就職活動を行い、家計にも生活費を少しずつ入れてもらうことができれば、次男さんも家族もお互いに助かるはずです。

ひとりで月額22万円の収入を家計に入れるのは難しいかもしれませんが、働き手を増やしてお互い協力しあえば無理ではありません。

通信費と保険料に見直しの余地あり

食費やお小遣いなどはよく節約されてがんばっていますね。さらに家計を見直すなら、通信費と保険料に注目しましょう。

通信費は、現在4万円かかっています。同居している4名と、一人暮らしのお子さんの携帯電話、自宅の固定電話やインターネット回線なども含まれているのでしょう。今年3月に、各社からスマホの新料金プランが出ています。それに伴い、従来の格安スマホ会社もさらに料金改定を行っています。例えば、ワイモバイルなどは、格安スマホでありながら家族割も充実していますので、家族のスマホプランを見直すと大きく節約できるはずです。家族全員がスマホを持つようになったら、固定電話を解約することも検討しましょう。

現在、ご主人が通院中ということなので、医療保障は残した方がいいと思いますが、死亡保障については減額の余地があります。月々3万円の支出はかなり大きい固定費ですから、保障の減額や特約を外すなどして、保険料を半分以下に下げれらないか検討してみましょう。

働き手を増やせば乗り越えられる

家族みんなで働いて、家計を支え合うことがこれからの家計には欠かせません。長年家事を一手に担って家族を支えてきたご相談者さんが新たに仕事に挑戦すること、家族が慣れない家事を担うようになること、いずれも苦労を伴いますが、それができれば、家計のピンチは乗り越えられます。力を合わせて頑張ってください。

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