小久保ヘッドに一任のはずが… 工藤監督が「2番・甲斐」を提案した意味

ソフトバンク・工藤公康監督(右)と小久保裕紀ヘッドコーチ【写真:藤浦一都】

2番に捕手の甲斐を起用したのは「私のアイデアです」

■ソフトバンク 7ー2 オリックス(22日・PayPayドーム)

ソフトバンクは22日、本拠地・PayPayドームで行われたオリックス戦に7-2で快勝した。初回に主砲・柳田が3ランを放ち、幸先よく先制。その後も効果的に加点してリードを広げて白星を掴んだ。

この試合で驚きを誘ったのが甲斐拓也捕手の2番起用だろう。甲斐にとっては初の2番。今季ここまで47試合で打率.285、4本塁打20打点と打撃好調とはいえ、負担の大きい捕手というポジション柄、2番起用に驚いたファンも多いことだろう。

これが結果的に、初回の3得点に繋がった。川島が三振に倒れ、1死走者なしで打席に入ると、ボールをしっかりと見極めて四球を選び出塁。盗塁も決め、栗原の右前安打で三塁へ進むと、柳田の3ランで先制のホームを踏んだ。

これまでは打順などの野手起用を小久保ヘッドに一任していた

甲斐の2番起用について、工藤公康監督は試合後に「私のアイデアです。バントもできるし、作戦もできる。状態もいいし、四球も取れるだろう、と。そこからチャンスになったら面白いだろうな、というのもあったので2番というところを推したら、ヘッドにOKと言っていただけました」と明かす。工藤監督の発案だったのだ。

オーダーの決定権は、もちろん監督にある。とはいえ、今季、工藤監督は打順の組み方など野手陣の起用に関しては、今季から就任した小久保裕紀ヘッドコーチと打撃コーチに一任してきた。基本的には小久保ヘッドと打撃コーチが話し合った上でオーダーを提案。これを指揮官が受け入れる形で打順が決まっていた。

それが、この日は監督自らオーダーを提案した格好だ。ここまで明確に、指揮官が自らの考えを反映させた打順は今季初ではないだろうか。これまで一任してきたオーダー決めに、工藤監督の意向も反映される。新たなチーム内の変化を感じた試合になった。

工藤監督と違い、小久保ヘッドは「泣くまで待とう」の“家康タイプ”?

工藤公康監督は独特の“勝負勘”の持ち主だ。相手投手との相性や嫌がりそうなこと、選手の調子を鑑みた上でオーダーを臨機応変に組み替える。昨季は100通りを超えるオーダーが出来上がった。スタメンに抜擢した選手が活躍したり、オーダー変更がズバリ的中する試合を何度も目にしてきた。

かたや、これまでの小久保ヘッドコーチの考え方は、開幕後しばらくは並びを大きく変えなかったように、オーダーの基本は“固定制”。言うならば、工藤監督は「鳴かぬなら鳴かせてみせよう」の“豊臣秀吉タイプ”、小久保ヘッドは「鳴かぬなら鳴くまで待とう」の“徳川家康タイプ”と言ったところか。

どちらが理想的かとか優れているかと言う話ではない。オーダーの固定制、変動制は、どちらにもメリット、デメリットがあり、監督、コーチそれぞれに考え方があるもの。その両方のメリットだけを吸い上げることができるようになれば、それが最も形として良い物になるのではないだろうか。

今回、ほぼ一任してきたオーダーに工藤監督が自身の意向を反映させたことは大きな“変化”に映る。野手のこと、打撃のことを良く知る小久保ヘッドコーチの考えに、投手視点から鋭い“勝負勘”を発揮する工藤監督のアイデアが絡んでいく。2021年型のソフトバンクの新たな戦いの形が見えたのではなかろうか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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