【夏場所】連続Vで綱取り目指す照ノ富士 気になる〝ヒザ爆弾〟の症状

賜杯を手にする照ノ富士(代表撮影)

気になる〝爆弾〟の状態は――。大相撲夏場所千秋楽(23日、東京・両国国技館)、大関照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が決定戦で大関貴景勝(24=常盤山)をはたき込んで2場所連続4度目の優勝を果たした。師匠で審判部長を務める伊勢ヶ浜親方(60=元横綱旭富士)は名古屋場所(7月4日初日、愛知県体育館)が綱取りになることを明言。その大関は古傷の両ヒザに不安を抱えながらの挑戦となるが、本当に大丈夫なのか? 事情に詳しい整形外科医を直撃した。

照ノ富士は本割で貴景勝に突き落とされ、互いに12勝3敗で並ばれたものの、決定戦の大一番では相手をはたき込んで連覇を達成。「やってきたことを信じて土俵に上がった。最後に白星につながってよかったかなと思います」と喜びをかみしめた。大関復帰場所での優勝は現行制度で初の快挙。照ノ富士自身にとっても、大関としては初優勝となった。

師匠で審判部長の伊勢ヶ浜親方は来場所の綱取りについて「1年で3回優勝しているし、2場所連続で優勝。(優勝に)準じる成績なら、そういう話も出てくる」と明言した。ただし、照ノ富士は2015年に右ヒザ前十字靭帯と外側半月板を損傷し、翌16年には古傷の左ヒザ半月板を痛めるなど、今も両ヒザに爆弾を抱えている。

稽古後に「ボキッ」と音を鳴らし「こんなヒザでやっているんですよ」と話したこともあるほどだ。気になる患部の状態について、実際のところはどうなのか。照ノ富士の治療やサポートにあたった経験がある同愛記念病院副院長の中川照彦氏(67)は「土俵では両ヒザに着けている装具でグラつきを抑えていますが、相撲以外で歩いている様子を見る限り大丈夫だと思います」と分析。

ヒザの状態が悪化すると、骨同士が当たって痛みを引き起こすリスクがあるというが「照ノ富士関は大腿四頭筋など、ヒザ周りの筋肉を鍛えることでカバーしています」と説明した。さらに「(以前は)ガムシャラにやっていたが、技というか、相撲自体がうまくなっている」。それまでのパワー一辺倒から〝技巧派〟への脱却がヒザの負担軽減につながっている。

その一方で、中川氏は「『爆弾』という表現はその通りで、ヒザがねじれたり変な動きになると危ない。なるべく負担をかけないためにも(前に出て)勝ち続けるしかないんです」とも指摘。やはり、無理な動きは厳禁のようだ。

その照ノ富士は「いつ何が起こるか分からない。力が出ているうちにどこまで通じるかを試して、引退するときに『すべてを出し切った』と満足できるようにしたい」。番付の頂点への挑戦が、いよいよ始まる。

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