医療福祉現場の外国人助けたい 宮崎弁を英訳集に 山下茜さん(24)国富町木脇

自身が作成した宮崎弁の英訳集を手にする山下茜さん=宮崎市・宮日会館

 国富町木脇の山下茜さん(24)は、医療や福祉の現場で働く外国人を手助けしようと、宮崎弁の英訳集を自作した。3月に修了した宮崎大大学院での調査研究の一環で、宮崎市内の病院に提供したもので、フィリピンから来日した看護師らに重宝されている。

 医療・福祉現場の外国人は、専門用語や標準的な日本語を学ぶ機会はあるが、方言が理解できず同僚や患者とうまく意思疎通が図れない例もあるという。山下さんは「言葉の壁に悩みながら勉強に励む彼女たちを応援したかった」と、作成のきっかけを話す。

 英訳集には主に県央部で使われる「日向方言」を中心に130語を収録。「じゃがじゃが=Yes)」「ぬきー=hot、warm)」「のさん=hard)」など、よく使われる単語をイラスト付きで説明し、検温や食事、入浴など場面別の会話文例もまとめた。サイズは職場でも携帯しやすいA5判とした。「『のさん』『だれた』『よだきー』など似た意味の訳し方に苦労した。初めて聞いた宮崎弁もあり、興味深かった」と、方言の豊かさを再認識できたという。

 山下さんは宮崎大宮高を卒業後、宮崎大教育文化学部(当時)に入学。日本語支援教育と”地域ことば”をテーマに研究を深めた。同大学院では宮崎市の野崎病院に勤めるフィリピン人5人に意識調査を実施。そこで日本語習得のサポートが必要と感じ、週1回病院に出向いて会話や文法を教える傍ら英訳集も作った。

 「親しみやすい工夫を凝らした。英訳集を渡した時の喜ぶ姿が忘れられない」と山下さん。同病院で外国人教育を担当する看護師の土居早苗さんは「宮崎弁を楽しそうに使う人もいる。看護師資格を取得した後も必要なスキルなので大変ありがたい」と感謝。同じ法人内の介護老人保健施設で働くベトナム人にも山下さんの英訳集を配り、好評だという。

 宮崎労働局の統計(2020年10月末現在)によると、医療・福祉分野で働く県内の外国人労働者は204人。山下さんは「同じ境遇の外国人は他にもおり、多地域、多言語への対応が必要。支援の輪が広がってほしい」と願っている。

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