〈じょうえつレポート〉行政と建設業界 激震 糸魚川市官製談合事件 市職員、業者3人逮捕 捜査続き広がりを懸念

 糸魚川市が昨年12月に行った、押上新駅公衆トイレ整備工事に関する入札で、事前に予定価格を漏らしたとして官製談合防止法違反などの疑いで市職員1人が、公正な入札を妨害した疑いで落札した業者の営業担当者2人が19日、県警に逮捕された。県警はさらに捜査を続けている。糸魚川市の行政と建設業界に激震が走っている。(報道部・糸魚川市官製談合事件取材班)

今年2月から市内で「うわさ」

営業担当者2人が逮捕された猪又建設には19日夜、県警の捜査員が入り資料を押収した

 官製談合事件については今年2月初旬から、糸魚川市内で「県警からの事情聴取が行われている」という「うわさ」が出ていた。

 内容は「市の職員が予定価格を外部の業者にメールなどで伝えていた」というもの。今回逮捕者が出た業者の社名、予定価格を外部に漏らした案件の名称などの情報が飛び交っていた。4月の糸魚川市長選、市議選が近づくにつれ、「うわさ」は沈静化したが、5月の連休明けになって再燃した。

 同市内の建設会社の営業担当者は「(業界の)空気が重苦しく、本格的な捜査をするなら、いっそ早くしてくれないかと思っていた」と振り返る。

予定価格対比落札率99・1%

 事態は19日、急展開した。県警捜査2課は同日夜、官製談合防止法違反などの疑いで市係長の久保田雅樹容疑者(48)を、公契約関係競売入札妨害の疑いで猪又建設営業部長、古川浩容疑者(69)と同営業係長、佐々木将容疑者(32)をそれぞれ逮捕。さらに糸魚川市役所と猪又建設を家宅捜索、資料を押収した。県警は20日、3人の身柄を新潟地検に送致した。

 久保田容疑者は昨年11月下旬、新駅公衆トイレ整備工事について、佐々木容疑者に予定価格を教示し、同12月8日、予定価格に近い1900万円で落札させた疑い。佐々木、古川両容疑者は久保田容疑者から知らされた金額に基づき、1900万円で落札して公正な入札を妨害した疑い。市は同工事の予定価格は1917万4000円と公表しており、落札率は99・1%となる。極めて高率での落札だ。

 市の説明によると、予定価格は遅くとも昨年11月24日の公示前に決まっていたが、久保田容疑者がどのタイミングで、どういう経緯で佐々木容疑者に伝えることになったかは、明らかになっていない。

 市は20日開いた会見で独自調査を行う方針を示した他、猪又建設を同日から6カ月間の指名停止処分にした。

官製談合により職員が逮捕されるという、異例の事態となった糸魚川市。米田市長は「事件発生に至った要因を徹底的に究明する」と述べた(20日)

業界内外困惑「この件だけか」

 しかし、今回の逮捕で事件が終わりを迎える、と考える関係者は少ない。「扉が開いただけ」という声もある。

 市は21日、市議会に対し今回の経過を説明。市議からは官製談合の裾野が広がるのではと懸念し、猪又建設以外の事業者への発注は今まで通り可能かという質問が上がった。市は「今後の捜査の進展によってはいろいろな事案が発生することが考えられる」として、明確な回答を避けた。

 県内のある建設関係者は「糸魚川市内の建設業界の一部には以前から、自分たちで必要な見積もりをしないまま、市の担当部署から予定価格を聞き出そうとする習慣があった」と話す。別の関係者は「落札率が100%になることは、積算をしっかりやればあり得ないことではない。しかし、その答えをどう出したかが問題。予定価格をあらかじめ発注者(市)から聞くような会社があることは、建設業界としては迷惑この上ない」と憤った。

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