肩書は“代表取締役社長”兼“プロ卓球選手” 森薗政崇、現役中のビジネスは「メリットしかない」

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プロ卓球選手でありながら代表取締役社長として会社経営も行う。

卓球界で唯一無二の道を進むのが森薗政崇だ。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗は、世界卓球ダブルス銀メダル、全日本選手権シングルス準優勝など、国内外で数々の実績を残すトップアスリートだ。

一方で、卓球用品販売、卓球場運営、選手マネジメント、卓球大会運営など多くの卓球事業を展開するFPC株式会社の代表取締役社長としての顔も持つ。2018年12月にインパクトHD(株)から、続く2021年1月には(株)Eストアーと上場企業2社から1億円を超える大型資金調達を行うなど、経営者としての手腕を振るう。

森薗はなぜプロ卓球選手でありながらビジネスを行うのか。今回の全3話の特集では、森薗の経営者としての一面を掘り下げる。

【森薗政崇(もりぞのまさたか)】1995年4月5日生まれの26歳。東京都出身。青森山田中高、明治大学と卓球界の名門校で腕を磨き、現在はプロ卓球選手として活躍。アスリートとして2017年世界卓球デュッセルドルフ大会男子ダブルス銀メダル、2021年全日本卓球選手権男子シングルス準優勝など国内外で数多くの実績を残しながら、FPC株式会社の代表取締役社長も務める。

社長・森薗政崇が語る事業構想

「大丈夫ですかね?左腕、パツパツじゃないですか?」。森薗“社長”が見慣れないスーツ姿で現れた。森薗“選手”としての証でもある鍛え上げられた左腕には、スーツは少しキツそうだ。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗は、Tリーガーや日本代表候補選手として活躍する傍ら、FPCの経営者として卓球事業に乗り出している。

卓球用品販売や大会告知を行うポータルサイトの「ミングルス(Mingles)」の運営や、神楽坂に構える卓球場「T-CROWN(ティークラウン)」でのレッスン事業、複数のプロ選手、高校生、小学生のマネジメント業務などその業種は様々だ。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

「ミングルスは、5月20日に物販サイトを大幅リニューアルしました。オープン大会や各連盟の大会情報掲載も充実していきますし、年度内には予約機能も付けられるように進行中です。当社運営の大会はワールドツアーのようにランクを付けてやっていて、各地で行うチャレンジマッチで優勝した選手が一番レベルの高いプレミアマッチに出る。プレミアには僕も予定が合えば出てますよ」。

事業内容を語る顔つきは、ビジネスマンそのものだ。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

「みんなが利用するプラットフォームとしてミングルスがあって、物販、大会、卓球場、すべてが連動して、卓球業界がもっと便利に、みんなの卓球人生がもっと豊かになる。そんな中長期構想を描いてるので楽しみにしていてください」と今後の事業展望も明かした。

現役中のビジネスは「僕の場合、むしろメリットしかない」

現役のアスリートとして社長業を兼任する。ビジネスに時間や労力を割かれる分、競技へのデメリットはないのだろうか。

森薗は「あくまで僕の場合は」という前置きをしたうえで「むしろメリットしかない」と即答した。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

「すごく言われるんですよ。『大丈夫?』とか『中途半端じゃない?』とか。だけど今、僕の中で卓球は充実していて楽しいし、事業もとても楽しい。まったく苦ではなくて、常に活性化されている状態。仕事に打ち込むことで、ダラダラする時間が減ったので、生活にメリハリが出て、むしろすごく体調が良くなりましたね(笑)」。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

アスリートがビジネスをすることに対して世間から賛否両論はある。だが、森薗は全てを承知の上で二足のわらじを履き、2年連続世界卓球代表権獲得や全日本シングルス準優勝など文句の付け所のない成績を残している。卓球の実力は維持どころか向上し続けている。

「どんな選手でも練習しないと強くなれない。僕も今後選手として上を目指す気持ちは強く持っているので、練習時間は経営者になる前と変わらずとっています。ただ、どれだけ練習すると言っても1日8時間くらいが限度。睡眠を8時間として、残りの時間を考えると、僕はこれまで何もしてなかったも同然でした。休憩やケアを除いても時間は1日に何時間も残っているので、そこで仕事をしています。時間をすごく有効に使えていて、人生の密度が濃くなりましたね」。

「負けて周りに『現役選手とビジネスは無理』と言われるのは悔しいので、練習時間は変わりません」

ビジネスで「考え方が柔軟になり、視野が広がった」

森薗はビジネスに取り組むことで、卓球への好影響もあったと明かす。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

幼い頃から豊富な練習量をこなしてきた森薗は「毎日必死に汗をかいてやることこそが正解」という思考で卓球に向き合ってきた。だが、ビジネスの世界に飛び込み、様々な成功者と触れ合うことで、勝つための思考や物事の見方など、自身の視野の狭さに気づかされたという。

「これまでは卓球をちゃんと見られてなかったし、頭を使ってできていなかった。基礎練習自体はものすごく重要だけれども、1点を取るためにどうするか、もっと簡単に勝つためにはどうするかを考えれば良かったと気づいた。考え方が柔軟になり、視野が広がりました」。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

そこから森薗は固定観念に捉われなくなった。

「地域のスポーツセンターに行って練習してみたり、卓球強い弱い関係なくそこにいるいろんな人たちを見て、サーブが上手いなと思ったらすっと取り入れるようになれた。『強い選手とはこうあるべき』という固定概念や見栄を捨てることで勝つためにはどうすべきかを本質的に考えられるようになりましたね」。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

逆にこれまで卓球で培ってきたものがビジネスでも生きていると振り返る。

「自信や経験はすごく大切。僕はドイツで言葉も通じない中、生活して、ブンデスリーガで試合して、その中で強くなってきた。だからどこに行っても、物怖じせず堂々と判断できていますね」。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗を突き動かす根源は“青森山田”

森薗をここまでしてビジネスにのめり込ませる根源は何なのだろうか。

「自分が信頼できる仲間と卓球業界に貢献できるようなことをしたいというのがまずはあって、最終的には夢があります」。

写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

しばしの沈黙を挟み続けた。

「もう一度、青森山田を復活させたい」。

森薗の思いとは。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)

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