矢野阪神が交流戦で実証する〝世代交代〟の成果「タイガースに居場所ないと分かってくれるはず」

世代交代を断行した阪神・矢野監督

首位・阪神は2位・巨人に4・5ゲーム差をつけて、25日から本拠地・甲子園にロッテを迎えて交流戦に入る。ここまで28勝12敗2分け、12球団唯一の勝率7割と「満点」に近いデキの3年目の矢野阪神。2年ぶりの交流戦では、指揮官就任後に世代交代を推し進めるために行った〝決断〟が正しかったことを証明する機会にもなるという。

普段は対戦のないパ・リーグとの交流戦を前に矢野燿大監督(52)は「スコアラーさんも協力してやってくれているし、今は情報は映像も含めて、どこにいても見られる環境にある。準備はしっかりやっていけると思う」と話し、泰然自若で臨む構えだ。

実際にパ球団相手だからと言って、特段の秘策を考える必要もないほど今年は投打に均整がとれている。先発陣は西勇、青柳、秋山、伊藤将、ガンケル、アルカンタラに二軍再調整組の西純や藤浪など手ごまが不足することはまずない。打線も1番・近本、3番・マルテ、5番・サンズ不動の並びに、下位には得点圏打率ナンバーワンの梅野、その間に怪物新人・佐藤輝や故障から復帰の主将・大山が入り〝切れ目〟は全くない。

昨年はコロナ禍により行われなかった2年ぶり交流戦。だからこそ「過去2年のチーム編成の変化を検証する絶好の機会」とチーム事情に詳しい関係者は話す。何を指しているかと言えば、鳥谷敬(ロッテ)や能見篤史(オリックス)ら猛虎で一時代を築いた面々と現メンバーとの比較だ。

開幕から首位を快走、2か月で貯金16を積み上げた今季のチームで「世代交代」が進んだのはまぎれもない事実。しかも、現在ではそのことを肯定的に受け止める声がほとんどだ。だが、それはかつてのチームを支えた功労者たちにも見切りをつけたからでもある。

直後は熱狂的ファン中心にメディアからも「冷たい」と批難の対象となってきた過去があるが、結果として近年の編成戦略が正しかったことを今年のここまでの成績が証明しているとも見てとれるからだ。

チームの編成事情に詳しい関係者は「今年、メディアの皆さんは佐藤輝の活躍を連日、取り上げてくれていますが、昨年、中心打者だったボーアがいればとか、福留がいれば…みたいな報道ってありました? 見たことないけど(笑い)」と冗談交じりに指摘しつつ、こう続けた。

「分かって欲しいのは我々もしっかりとした根拠のもとで、誰を残すか、切るか、はやっている。功労者だって同じ。鳥谷にしても能見にしても今回、交流戦で敵として戦ってみれば彼らならすぐ分かると思う。少なくとも今のタイガースに自分がいても『居場所はないな』というね。長く現役を続けている彼らだからこそ、想像力はすぐ働くだろうし」と話す。

チーム全体の新陳代謝を計るうえでは、どのチームでも「若返り」は避けては通れない。これまでの矢野政権下では、絶えずその部分に目を背けることなく、毎オフごとにチーム編成の「若返り」を断行してきた。3年目での前半戦首位ターンは、それまでのオフの度に「功労者」というノスタルジックな響きに惑わされることなく、断行されてきた人員整理と、必要な人材の確保を的確に繰り返してきたからこその〝成果〟でもある。

今回の交流戦はそんな過去の決断との〝答え合わせ〟の場。虎の背広組にとっては改めてその施策で得た成果を検証する機会となりそうだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社