東京五輪は本当に国民犠牲の実験場に…代々木公園では木々を剪定しパブリックビューイング会場を設営開始、しかも電通が巨額で落札

東京都が作成した「東京2020ライブサイト等実施計画(案)」より抜粋

東京五輪開催をめぐり、国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府からぞっとするような暴論が相次いでいる。IOCのジョン・コーツ調整委員長が緊急事態宣言下でも「絶対にできる」と発言したかと思えば、トーマス・バッハ会長も「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と発言。さらに、平井卓也・デジタル改革担当相も「新しいパンデミック下でのオリンピックの開催というモデルを日本が初めてつくることができるのではないか」などと発言したからだ。

言うまでもなく緊急事態宣言が発令されている状態というのは、感染が拡大し病床が逼迫していることを示しており、実際、国民生活には罰則つきの制限までかけられている。そんななかで、「犠牲者が出ても実現しなければならない」、さらには「パンデミック下でのオリンピックを日本が初めてつくる」などというのは、“日本スゴイ”のために国民を人体実験にかけると言っているに等しいだろう。

とても正気の沙汰とは思えないが、しかし、IOCや日本政府、東京都は本気で国民を犠牲にして日本をパンデミック下の巨大イベントの実験場にするつもりだ。

本サイトでは先日、東京都が都内の小学生や中学生、高校生など約81万人を観戦に学徒動員する計画を続行中で、緊急事態宣言下の4〜5月に教員らに会場の集団下見を実施させていたことを報じた(https://lite-ra.com/2021/04/post-5868.html)。この問題を「AERA dot.」も報道、記事のなかで都の教育委員会が「現時点で撤回する予定はない」と明言していた。

また、22日には、開催強行だけではなく、政府や東京五輪組織委員会、IOCが「無観客回避」で一致していると複数のメディアが報じた。スポーツ報知では、組織委関係者が「観客がゼロということはない。プロ野球もJリーグも観客を入れて開催している。五輪も少しでも入れる方法を模索している」と証言している。

そう。開催強行どころか、国内の観客を入れ、子どもを強制動員する計画が着々と進んでいるのだ。

さらに、ここにきてもうひとつ、信じられない計画が浮上し、ネット上で大きな批判を集めている。東京・渋谷の代々木公園内で、木々を剪定し、東京五輪のパブリックビューイング会場をつくろうとする計画が進んでいるのだ。

●コロナ収束の目処も立ってもいないのに、パブリックビューイングの実施を決定する狂気

これは「東京2020ライブサイト計画」というもので、コロナ第一波前である昨年1月に作成された東京都の資料によると、〈世界中から訪れる観戦客等が、競技チケットの有無にかかわらず、誰でもライブ中継を通じて競技観戦を楽しみ、大会の感動と興奮を共有できるような会場を設置することを目指〉すとして計画。大規模なライブサイトとなる「拠点会場」には代々木公園と井の頭恩賜公園が選ばれ、競技のライブ中継=パブリックビューイングのほか、ステージイベントに競技体験、大会パートナーの出展ブース、飲食売店なども実施され、代々木公園では1日当たり3万5000人、井の頭恩賜公園では2万人の来場者が想定されていた。

しかし、周知のとおりその後、日本も含め世界では感染拡大が起こり、東京五輪の開催も延期に。当然、この計画も見直されると思われていた。ところが、東京都で感染が急拡大していた最中の昨年12月15日の資料によると、第2波到来中の昨年9月に〈ライブサイトを実施する方針をIOC・組織委員会と確認〉したとし、こう宣言されているのである。

〈新型コロナウイルス感染症を乗り越え、都民・国民の共感を得て大会を成功させるためには、都市の活動であるライブサイトの開催は重要。適切な感染症拡大防止対策を行った上で実施〉

さらにこの資料では、代々木公園と井の頭恩賜公園の2会場のほか、〈都のパブリックビューイングを核とする盛り上げ会場〉として日比谷公園や上野恩賜公園、東京都立大学 南大沢キャンパス周辺(講堂内)、調布駅前広場周辺などでも実施することを明記しているのである。

感染拡大の真っ最中に、収束の目処もまったく立ってもいないというのに、パブリックビューイングや競技体験、関連イベントの実施を決定する──。それだけでも頭がおかしいとしか思えないが、実際に開催まで2カ月を切った現時点で東京は緊急事態宣言下にある。しかも、現在主流となっているイギリス型変異株は従来型よりも感染力が高く、事実、5月2日の時点でコロナ担当の西村康稔・経済再生担当相も「屋外でマスクを付けていても確認される事例の報告が相次いでいる」と述べているのだ。

ライブサイトの実施について書かれている前述の資料では、感染症対策として〈3密(密閉・密集・密接)の回避〉だの〈飛沫感染・接触感染防止〉だのと並んでいるが、現在主流となっているイギリス型変異株の感染力を考えれば、屋外でも人が集まれば危険性は高い。その上、厚労省アドバイザリーボードのメンバーである西浦博・京都大学教授は5月19日、イギリス型変異株よりも感染性が50%も強いとも言われるインド型変異株について「日本でも、2カ月程度よりも短いスパンで置き換わりが起こるものと考えられる」と発言。つまり、東京五輪開催時にはさらに強い感染防止策が必要で、屋外で人が集まるパブリックビューイングの実施などもってのほかの状況になっているのは間違いない。

●代々木公園のライブサイト運営業務は電通が落札! 東京都が計上した予算は76億円

ところが、こうした危険性の高まりも、五輪開催に突き進む関係者たちは真っ向から無視。なんと、ライブ会場の拠点である代々木公園では、6月1日からは会場設営工事を強行するのだという。

代々木公園で6月1日から工事がはじまるライブサイト会場の予定地は、すでにネットやロープで囲まれ、立ち入り禁止となっている。これは政府の緊急事態宣言と都の緊急事態措置を受けて4月25日から当該エリアを閉鎖しているためだが、昨年や今年はじめの緊急事態宣言発令時にはこのような措置はとられていなかった。また、当該エリアには広場があるため外飲み対策として広場を立ち入り禁止しているようにも思えるが、代々木公園内に外飲みできるエリアはほかにもある。つまり、緊急事態宣言にかこつけて、ライブサイト会場の工事に入る前から閉鎖した可能性もあるのだ。

しかも、いまもっとも批判を集めているのは、その工事内容だ。ライブサイト会場の工事の準備のため、すでに4メートル以下あるいは8メートル以下の木の剪定がはじまっているからだ。

この状況下でパブリックビューイングを実施するということだけでも絶句なのに、そのために都内でも数少ない自然豊かな市民の憩いの場である公園の緑をなくそうとするとは──。しかも、入札情報を確認したところ、この代々木公園のライブサイトの実施運営業務は電通が落札している。

ちなみに、東京都の2021年度予算案の概要によると、「ライブサイトの感染対策」に8億円、「ライブサイトを中⼼とした祝祭空間の創出(オリンピック)」に47億円、「区市町村が実施するコミュニティライブサイトやシティドレッシング等に対して⽀援」に21億円を計上。一部シティドレッシング等も含まれているが、ライブサイト関連で76億円もの予算が組まれている。

このうちどれくらいの金額が電通に渡っているかは、東京都が直近半年間に決定した分の落札価格しか公開していないためはっきりしないが、ライブサイト運営業務の電通の落札価格は少なくとも十億円以上にのぼるのではないかと言われている。

この金額、そしてこの間の五輪組織委と電通の癒着を見ていると、今回のライブサイト強行も、電通に儲けさせるためとしか思えなくなってくる。

いずれにしても、このままでは、緊急事態宣言下の感染拡大期に、都内の公園などで電通が取り仕切るパブリックビューイングなどのお祭りイベントが強行され、その代わりに貴重な緑が減らされてしまう。

そして、このパブリックビューイングは東京都だけで実施するのではない。北海道、岩手、宮城、福島、神奈川、熊本まで全国津々浦々で実施される予定で、北海道などはやはり電通北海道が企画運営を落札している。

狂っているとしか思えないが、しかし、これは紛れもない現実だ。いま、ネット署名サイトでは「代々木公園の自然を破壊する、東京五輪2020ライブサイト計画の中止を求めます」という署名が開始され、本日19時現在、1万7000人を超える賛同が寄せられている。当然、東京都は6月1日からの工事を中止すべきだが、それ以上に、犠牲者が出ることも厭わず五輪強行開催に突き進もうという菅政権やIOCに「ふざけるな!」と声をあげなくてはならない。
(編集部)

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