いま一度「もったいない」

 「物のあるべき姿」を「勿体(もったい)」といい、古くは「物体」と書いていた-と、ある辞書は「勿体」を説明している。それに「ない」が付けば「あるべき姿を失う」ことになる▲転じて「もったいない」は「粗末にされ、無駄になって惜しい」という意味になったという。「もったいないお言葉」のように「ありがたい」の語義もある▲外国語に訳しにくいらしい。英訳を探しても「無駄な」という意味の単語しか見当たらない。ノーベル平和賞を受けたケニアの環境活動家で、没10年のワンガリ・マータイさんが広めようとしたのは言葉だけでなく、「惜しい」の心持ちだったに違いない▲いま一度「もったいない」をかみしめる時なのだろう。本来は食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の量を2025年度に10%減らそう。県はこんな目標を掲げている▲家庭の「ロス」、食品製造や外食産業といった事業所の「ロス」から計算すると、県民1人当たり、1日にコンビニおにぎり1個分の重さの食品ロスが生じているという。何を、どう減らすか▲食べ残しを少し減らす。売れ残りを少し減らす。提供された食料品を、必要とする人や施設に渡す活動「フードバンク」を少しずつ広げる。近道はないのだろう。「もったいない」を少しずつ、皆が持ち寄るしかない。(徹)

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