【イラストでたどる萩往還】 No.26「鰐石橋と象頭山」

▲文・イラスト=古谷眞之助

 萩藩の絵図方・有馬喜惣太の描いた「行程記」には萩から江戸までの行程が絵図として示してあるが、鰐石橋については、「板橋、幅十二間」と記してある。橋は明治18年に天皇の山口御幸に合わせて鉄製の橋に改められ、県下初の鉄橋となった。この橋の下流右岸には鰐石(別名重石)があり、文書館に残る古い絵葉書には巨石と鉄橋を背景に水量豊かな椹野川が写っている。以前は小郡からこの付近まで、川船が上ってきていたという。

 橋の背後には明の官人・趙秩が漢詩に詠った象頭山があり、下流左岸には山口生まれの女性にとっては面白くない伝説の伝わる姫山がある。かつて鰐石橋付近は蛍の名所だったが、その蛍は姫山の美女の魂とも伝わる。

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