国会議員が一番使っているSNSメディアは一体何?!国会議員SNSメディア利用度調査 その1(中村よしみ)

政治のオンライン化が進み、政治家と有権者とのコミュニケーションツールの手段であるSNS活用の有益性は、新たな政治活動のあり方として広がりを見せています。また、活用が進む一方で、政治家の投稿した内容に国民とのズレが生じて炎上を招く問題ケースも多発し、政治家がSNSとの付き合い方に困惑している実情があります。しかし、こうした状況下においても、議員の SNS 利用率は増加傾向にあります。
今回は、国会議員SNSメディア利用度調査結果(2020年版)を行いました。加えて、前回衆院選が行われた2017年に比べて2020年度において、国会議員のインターネットメディア利用はどのくらい変化しているのかも調査しました。そしてその結果から、なにが国会議員の利用率に影響しているのかを分析しています。

調査の概要(国会議員インターネットメディア利用度)

今回の調査は、国会議員のインターネットメディア利用度における全体の傾向を導き出し、国会議員のSNS利用率になにが影響しているのか分析を行います。
今回調査対象としたメディアは、(1)個人ウェブサイト、(2)Twitter、(3)Facebook(個人ページ・ファンページのどちらか一方、もしくは両方を所有)、(4)Instagram、(5)YouTube等の動画です。
なお以上のインターネットメディアを条件として選定した理由は、Twitter、Facebookと、Instagramは、SNSの対象であるからです。
(それ以外のLINE@、メルマガについては議員全体で利用率が低いため、インターネット利用を行う議員にとって調査時点ではあまり重要視されていないメディアと判断、ブログに関しては、個人ウェブサイト上における議員の活動報告との線引きが曖昧だったため、また近年ブログをFacebookに移行している議員が増えているため除外しています)

対象

国会議員全710人を対象に調査(2020年12月時点)

定量調査の目的

定量調査より国会議員のインターネットメディア利用度における全体の傾向を導き出し、国会議員のSNS利用率になに(変数:属性等)が影響しているのかを明らかにする。

集計基準

議員の肩書きで運営されているものを基準とする

集計対象とするインターネットメディア

(1)個人ウェブサイト、(2)Twitter、(3)Facebook(個人ページ,ファンページのどちらか一方,もしくは両方を所有)、(4)Instagram、(5)YouTube

データ集計期間

(1)〜(5)のメディア所有の有無:2020年11月〜12月
Twitter: 2020年12月8日時点、YouTube: 2020年12月9日時点、Facebook: 2020年12月10日時点、Instagram: 2020年12月11日時点

定量データの集計手順

続いて、インターネットメディア利用度データの集計手順について説明します。集計基準としては、議員の肩書きで運営されているものを基準としました。また今回は、所有の有無を調査するため、事務所名義で運営しているものと議員個人名義で運用している両方の名義のアカウントがあった場合は、1としてカウントしています。

(1) 一般サイトより国会議員リストを入手する
(2) 政党の公式ウェブサイトより、議員のプロフィールを参照し、年齢・性別・当選回数などを個人データの正誤を確認する
(3) 政党の公式ウェブサイトにて、議員個人ウェブサイト、ブログ、SNSへのリンク先を確認し、カウントする
(4) 各議員の公式ホームページを検索し、議員個人ウェブサイトを訪問し、各種SNSを確認する。政党ウェブサイトに掲載されていないものがあれば、カウントする
(5) Googleで議員個人名(例:河野太郎、河野 太郎、河野たろう、こうのたろう)を検索し、個人ウェブサイトにも掲載されていないメディアがあればカウントする
(6) 同姓同名がいる場合は、政党、都道府県などでAND検索し、掲載されていないメディアがあればカウントする
(7) 各SNS内で同様に検索し、掲載されていないメディアがあればカウントする
(8) Facebook, Instagramに関しては、英語名(例:Taro Kono)でも検索 し、掲載されていないメディアがあればカウントする
表1 国会議員のインターネットメディア利用度調査概要

※注記
・データの収集方法は、個人アカウントの正誤確認が必要なため、自動化せず目視で一つ一つ確認した。また集計期間内であっても、集計期間前半に確認した議員が、集計期間後半になって新たに開設したインターネットメディアは集計から漏れてしまう。そういった限界もあるため、所有者数の最低の数値であることを了承いただきたい。また政党は、調査期間に存在していた政党である。
・衆議院議員:http://democracy.minibird.jp/,参議院議員:http://democracy.minibird.jp/councillors.php 上記の通り一般サイトからリストを入手したため正誤の確認を行なった。
・最終的に見つかったアカウントの6割程度しか紐付けがされていない。
・全国会議員710人中692人が公式ホームページを開設していた。
・Twitter、Instagramの鍵付き、招待制アカウント(Twitterで4件、Instagramで2件)、Facebookでプロフィール写真のみ投稿のアカウント、および各SNS投稿数0のアカウントは除外している。

国会議員全体のメディア利用率の2017年時との比較を図から図に、属性ごとのグラフおよび独立性検定の結果は、図から図に示しました。また、Twitter、YouTube、Facebookの各データをグラフとして、図から図にまとめています。
※次節では、以下の項目ごとに沿って具体的に分析結果を参照します。

1.国会議員全体のメディア利用度・利用(Twitter、Facebook、Instagram、YouTube)
(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数、(g)地域別

2.Twitterの利用度・投稿頻度
(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数、(g)地域別

3.YouTubeの利用度・投稿頻度
(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数、(g)地域別

4.Facebookの利用度・投稿頻度
(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数、(g)地域別

国会議員インターネットメディア利用度集計結果の概要(Twitter、Facebook、Instagram、YouTube)

まず表2-1~3と3-1~2において、国会議員全体のTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeのアカウント所持数を確認してみる。集計時点(2020年12月)で国会議員全体で最も利用の多かったメディアは、Facebookであり、100%に近い議員(658人)が所持していた。その他の媒体では、Twitterは561人、Instagram 327人、YouTube 529人であった。各メディアの利用率は、Facebook (92.7%), Twitter (79.0%), YouTube (74.5%), Instagram (46.1%)となる。

表2-1国会議員インターネットメディア利用者数・利用率

表2-2国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(男性)

表2-3国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(女性)

表3-1国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(衆議院)

表3-2国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(参議院)

国会議員インターネットメディア利用度の集計結果(Twitter、Facebook、Instagram、YouTube)

続いて、より具体的に国会議員のインターネットメディア所持における結果を、(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数、(g)地域別の項目ごとに集計しました。

(a)政党別

図1 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(政党別)
政党(自、立、公、共、維、国)

χ2 = 19.9 < 25.0 = χ2 0.05(15), P = 0.175

利用が多い順としては、国民民主党 > 立憲民主党 > 日本維新 > 日本共産党 > 公明党 > 自由民主党 という結果でした。

(b)衆議院/参議院

図2 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(衆参別)
χ2 = 2.42 < 7.81 = χ2 0.05(3), P = 0.490

(c)男女別

図3 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(男女別)
χ2 = 6.84 < 7.81 = χ2 0.05(3), P = 0.077

(d)年代別

図4 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(年代別)
30代、40代、50代、60代、70,80代:χ2 = 62.4 > 25.0 = χ2 0.05(15), P = 0.000

平均年齢:1期(52.1歳)、2期(54.7歳)、3期(55.3歳)、4期(59.0歳)、5期(60.1歳)、6期(63.0歳)、7期(66.3歳)、8期(67.1歳)、9期(67.0歳)、10期以上(72.8歳)

(e)期数(当選回数)別

図5 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(期数別)
1期,2期,3期,4~6期,7~17期:χ2 = 26.1 > 21.0 = χ2 0.05(12), P = 0.010
平均年齢:1 期( 52.1 歳)、 2 期( 54.7 歳)、 3 期( 55.3 歳)、 4 期( 59.0 歳)、 5 期( 60.1 歳)、 6 期( 63.0 歳) 、 7 期( 66.3 歳)、 8期( 67.1 歳)、 9 期( 67.0 歳)、 10 期以上( 72.8 歳)

(f)在職年数

図6 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(在職年数別)
χ2 = 26.8 > 12.6 = χ2 0.05(6), P = 0.000
平均年齢:10年未満(52.9歳)、20年未満(59.8歳)、20年以上(67.8歳)

(g)地域別

図7 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(全体・地域別)
χ2 = 30.3 < 47.4 = χ 2 0.05 (33), P = 0.603

利用の多い順としては、東京 > 東海 > 近畿 > 北海道 > 南関東 > 北陸信越 > 全国比例 > 四国 > 中国 > 東北 > 九州 > 北関東 という結果になりました。続いて、衆参・地域別の結果です。

図8 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(衆議院・地域別)

χ2 = 17.9 < 43.8 = χ 2 0.05 (30), P = 0.960

利用の多い順:東京 > 東海 > 近畿 > 北陸信越 > 北海道 > 南関東 > 中国 > 四国 > 東北 > 九州 > 北関東

図9 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(参議院・地域別)

χ2 = 17.3 < 47.4 = χ 2 0.05 (33), P = 0.989

利用の多い順:北海道 > 東京 = 四国 > 東海 = 近畿 > 南関東 > 全国比例 > 東北 > 北陸信越 >北関東 > 九州 > 中国

大都市を抱える地域(東京、東海、近畿)の利用度が高かったため、人口600万人以上の都道府県(東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県)、人口200万人以上の都道府県(兵庫県、北海道、福岡県、静岡県、茨城県、広島県、京都府、宮城県、新潟県、長野県、岐阜県)、それ以外の人口200万人未満の都道府県、3つのグループに分けたところ、大都市圏の議員のほうがインターネットメディアの利用に積極的であることが読み取れました。また、人口密度が400人/km²以上の都道府県(東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、愛知県、千葉県、福岡県、兵庫県、沖縄県、京都府、香川県、茨城県、静岡県)と、それ以外の人口密度400人/km²未満のグループに分けた場合でも、人口密集地域の議員の高いアカウント所有率が示されました。

図10 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(都道府県・人口別)

χ2 = 12.3 > 7.81 = χ 2 0.05 (3), P = 0.006

図11 国会議員インターネットメディア利用者数・利用率(都道府県・人口密度別)

χ2 = 10.9 > 7.81 = χ 2 0.05 (3), P = 0.012

全国会議員におけるインターネットメディアアカウント所有率について

・アカウント所有率は、高いものから順に、Facebook、Twitter、YouTube、Instagramとなっている。
・日本維新と国民民主党は、所属する全議員がFacebookのアカウントを所有している。
・日本共産党は、所属する全議員がTwitterのアカウントを所有している。
・Facebook、YouTubeのアカウント所有率は政党間の差は小さいが、Twitter、Instagramの政党間の差は大きい。
・れいわ新選組、NHKから自国民を守る党(編集部注:調査時の党名)、無所属議員はYouTubeのアカウント所有率が高い。
・旧民進党(現立憲民主党と国民民主党)所属議員のInstagramアカウント所有率が高い。
・YouTube以外のインターネットメディアは、女性のほうが利用率が高い(P = 0.032899)。
・インターネットメディアアカウント所有率は、年齢とともに下がっていく(30代: 87.5%; 40代: 84.5%; 50代: 77.1%; 60代: 67.7%; 70代: 54.9%)。とりわけInstagramは、高齢議員には浸透していない。
・期数、在職年数は、年齢とほぼ同じ傾向を示す。
・大都市を抱える地域では、インターネットメディア利用率が高い。
という結果となりました。

次回の記事では「Twitter利用度(投稿・更新数、頻度)の2017年と2020年との比較」について注目していきます。

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