県営住宅に移動販売車導入 住民の要望、長崎県が許可 「買い物弱者」支援

長崎・愛宕団地

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6月から愛宕団地にやってくる移動販売車「とくし丸」(とくし丸提供)

 長崎市南部の県営住宅愛宕団地(八つ尾町)で、食料品や日用品の買い出しに不便を感じている「買い物弱者」のため民間の移動販売車が導入される。30年以上前、傾斜地に建設された同団地では高齢化が進み、買い物にタクシーを利用する人もいるという。住民からは移動販売が憩いの場になることを期待する声も聞かれる。
 梅雨入りから間もない今月20日午後、同団地に暮らす黒瀬喜美子さん(74)は徒歩で10分弱のスーパーに買い物に来ていた。この日は傘で片手がふさがるため、エコバッグの代わりにリュックを背負っていた。店内をいつものルートで回りながら、晩ご飯と翌日の朝食の材料をカートのかごに入れていく。レジを終えるまで約15分。
 商品を詰めたリュックを背負って店外に出ると、傘を差して車道のある坂道を黙々と上り始めた。自宅までの約500メートルはほとんどが坂道か階段だが、足取りは軽い。ただ「今は元気だから毎日買い物に行けるけれど、今後足腰が悪くなったら心配よね」と話す。
 県によると、愛宕団地は1987年度から入居が始まり、現在9棟が傾斜地に並ぶ。全体で209世帯390人が入居し、65歳以上の高齢者が約半数を占めるという。
 同団地の自治会婦人部長の松田俊子さん(78)は「私も坂道を歩くのがきつくなってきた」と話し、住民の中にはスーパーからの帰りは荷物が重くてタクシーを利用する人もいると打ち明ける。「ヘルパーに買い物を頼んだりカタログを利用したりする人もいるが、本当は商品を自分で見て選びたいという声も聞く」。

坂道を上り買い物から帰る黒瀬さん=長崎市、県営住宅愛宕団地

 住民から移動販売車の活用を提案する声があり、自治会長の鶴田征一郎さん(81)が長崎市内の事業者に連絡。今年2月に試行的に食料品などを積んだ車が団地を訪れ約20人が集まった。車の左右には屋根があり、雨が降ってもぬれないつくり。住民にも好評だった。黒瀬さんは「普段会わない人と話す機会にもなる」と期待する。
 住民の要望を受け、県は県営住宅敷地内での移動販売車の営業を許可することを決定。高齢者の見守りや買い物弱者の支援に関する協定を県や長崎市と締結することなどを要件に盛り込んだ。他の県営住宅でも要望があれば対応を検討するという。
 農水省は、生鮮食料品の販売店などまで500メートル以上あって自動車を利用できない65歳以上を「アクセス困難者」と位置付ける。県内には2015年時点で約14万人いると推計され、65歳以上の人口の34.6%を占める。これは買い物に不便や苦労を感じる高齢者の割合とされ、全ての都道府県で最も高かった。
 県は25日、6月から毎週木曜日の正午、移動販売車が団地を訪れることが決まったと発表した。鶴田さんは「団地にとって明るいニュース。一日も早く来てほしかったのでうれしい」と喜んでいる。