中森明菜1年3か月ぶりのシングル「ディア・フレンド」おかえりなさい! 1990年 7月17日 中森明菜のシングル「Dear Friend」がリリースされた日

中森明菜待望の新曲「Dear Friend」

1989年4月25日にリリースされた「LIAR」から次のシングル「Dear Friend」がリリースされるまでおよそ1年と3か月。その間に何があったのかはあえてここで詳しく語らないが、明菜の芸能活動はパッタリと止まっていた。

1989年10月5日放送の『さよなら ザ・ベストテン』にも姿を見せることはなく、「少女A」で初登場した際の歌唱シーンがVTRで流れると、黒柳徹子が「明菜ちゃん、どうしてますか? 今日来ていただきたかったのに! みんなで心配してます。元気になってね!」と呼びかけていたのを覚えている。

世間が心配する中、ようやく新曲として「Dear Friend」がリリースされた。私は当時忙しくしていて、なかなか新曲を耳にするチャンスがなく、1年ぶりのテレビ生出演となった『夜のヒットスタジオ SUPER』でようやく初めて曲を聴くことができた。ニースからの中継で明るい笑顔を見せる明菜は驚くほど痩せ細っていた。しかしその時歌われた「Dear Friend」にはもっと驚いた。

メジャーコードによる構成のとても明るい曲

 回転ドアの向こうで  手を振る 彼女の影  たぶん 誰も 気づかない  ほほえみ 失くしてるなんて

落ち込んでいる友だちを励ます内容で、過去のシングルにはなかったメジャーコードによる構成のとても明るい曲。

「Hey!」「Come on!」などの合いの手や「For You!」と茶目っ気たっぷりに発するフレーズはこれまでの明菜には全く見られなかったものだ。

しかし、明るく歌う明菜の姿に違和感を抱いた方も多いようで「無理して元気に振る舞っているみたいで痛々しい」などという意見も多々見られた。確かにこの曲の歌詞を読んでいると、明菜に励まされるというよりは、聴いているこちらが当時の明菜に対して伝えたいフレーズが詰まっている。

 誰かに振り回されて  泣くのは似合わないわ  思い出して! ほほえんで  その胸の鼓動を確かめて

… あたりのフレーズは「明菜! それはこっちのセリフだよ!」と言いたくなる。

みんな明菜を待っていた! オリコン1位&売上50万枚突破

この曲は過去の明菜の作品と比べてあまりにも明るすぎることから、「明菜のイメージと合わない」という人も多いようだが、私は「明菜、こんな曲も歌えるんだ! カッコいいな」と素直に思ったし、何より歌う姿を見せてくれたことがとても嬉しかった。

それに、あの頃の明菜の心境は誰にもわからない。世間が心配していたように無理していたのかもしれないけど、スッキリ吹っ切れていたかもしれない。「私はもう大丈夫よ!」というファンに対するメッセージはあったのかもしれないが、ポジティブな歌の世界を表現してくれた明菜に対して、私は純粋に素晴らしい作品として評価してもよいと思うのだ。

「こんなはっちゃけた曲を出して、これから明菜はどうなっちゃうの?」と不安になったファンもいたようだが、心配しなくても次作「水に挿した花」は従来の明菜のイメージに戻ったので安心したのではないだろうか。

ちなみに「Dear Friend」はオリコンシングルチャートで初登場1位を獲得。売上枚数も「DESIRE −情熱−」以来の50万枚を突破。1990年の年間シングルチャートでも6位を記録した。これはみんなが「おかえりなさい!」と明菜を待っていたという証でもあるだろう。

それから、カップリングの「CARIBBEAN」も軽快なラテンアレンジが心地良いナンバーなので、ぜひ「Dear Friend」とあわせて聴いていただきたい。

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