残り2カ月

 陸上競技女子の廣中璃梨佳選手が力強いスパートで念願の五輪切符を手中に収めたのは今月の3日。鉄棒一本に種目を絞った内村航平選手が高難度の離れ技を次々に決め「美しい体操」の健在ぶりを印象づけたのは16日だった▲20日にはサッカー日本代表の守備陣を真ん中で支える吉田麻也選手がオーバーエージ枠で五輪代表チームに呼ばれることが決まった。五輪で見たいものが次々に増えていく▲ただ、見たいものがどんなに増えても、五輪開催に対する不安や疑念は消えず、逆風がやまないのが今の日本の世論だ。そこへ向き合い、丁寧な議論や説得を試みる人は現れないまま、また“問題発言”が飛び出した▲国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、五輪開催を実現するために「われわれは犠牲を払わねばならない」と述べた-とインドの通信社が伝えた。IOCの広報担当者が火消しに追われた。日本の皆さんに犠牲を強いるものではありません▲バッハ氏は「東京はトンネルの終わりの光になる」とも語ったそうだ。だが、各地の緊急事態宣言さえ解けない中、その実感は乏しい。バッハさん、何を根拠に▲開幕まで2カ月を切った。異論は聞こえないふりのまま、突き進んでいくのだろうか。既成事実の積み上げと時間切れだけを理由に。(智)

 


© 株式会社長崎新聞社