地元の自然調査に奔走 動物との触れ合いにも注力 佐世保・森きらら 育み 集い 憩う 森きらら開園60年・中

園外で地域の生き物の調査をする職員(森きらら提供)

 開園から20年が経過した1980年代。園のスタッフも増え、子供向けのイベントに力を入れたり、自然調査をしたりと、草創期にはできなかった事業に取り組むようになった。
 毎年2月中旬から3月末にかけて、動植物園の上空をツルの群れが渡っていく。84年に、このツルの北帰行のデータ収集を始めた。園外では、一帯が西海国立公園の中にある強みを生かし、地元の自然情報を収集。動植物に関する学術的な専門施設としての色彩を強めていった。

「佐世保がいかに自然豊かな場所かを市民の方に伝えたかった」と話す佐伯さん=佐世保市内

 81年に飼育員として採用され、後に園長も務めた佐伯信吾さん(69)=佐世保市瀬戸越4丁目=も調査を提案した1人。「動植物園には種の保存という役割もある。調査で得た情報を市民に還元したかった」と理由を語る。  2003年に始めた俵ケ浦半島での陸棲(りくせい)生物定期調査では、約50年ぶりに希少トンボ「ネアカヨシヤンマ」を確認。佐世保の多様な自然の「再発見」に寄与した。「陸の孤島」とも呼ばれていた同半島は、豊かな自然が残る貴重な場所。月に1度職員数人で向かい、地元の自然への理解を深めていった。
 園内でも新たな取り組みを始めた。「市民と動物の距離が近づく園づくりがしたい」と、86年当時では珍しかった動物ガイドや、エサやりのイベントなどを導入した。「市民に愛される園にするため必死だった」。佐伯さんは感慨深げに話した。
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 飼育員の林田茜さん(31)が採用されたのは、園名が「西海国立公園九十九島動植物園」に変わった2011年。園内には、足場が組まれた建物がいくつもあったのが印象に残っている。
 市は集客強化を狙い「動植物園活性化基本計画」を策定。09年からふれあい体験広場やモンキーゾーン、新ペンギン館の整備に取りかかっていた。林田さんが入ったころはリニューアルの真っ最中。15年には市の直営からさせぼパール・シーの指定管理に移行し、来園者へのサービス充実をさらに図っていく。
 そんな中、悲しい出来事もあった。人気者だったゾウのハナ子が16年9月14日、急死した。担当飼育員だった林田さんは、倒れているハナ子のそばで名前を呼び続けたが起き上がることはなかった。前日まで元気に砂遊びをしていただけに、信じられない気持ちだったという。「園にとっても、市民にとっても大きな損失だったと思う」と振り返る。
 林田さんは現在、キリンの飼育を担当している。毎週末行うガイドで心掛けているのは、一番身近で触れ合う飼育員だからこそ知っている動物の個性を伝えること。「こぢんまりとしている園だけど、その分職員と来園者、動物との距離が近い、温かみのある園です」と笑顔で話した。

キリンにエサを与える林田さん=佐世保市船越町、九十九島動植物園(森きらら)

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