広島ドラ1栗林のブレークを開幕直前に確信… 高橋慶彦氏が重要視する“冷や汗登板”

広島・栗林良吏【写真:荒川祐史】

ドラフト制後最長のデビュー以来17試合連続無失点

選手らに新型コロナウイルスの陽性判定が続出した広島は、5試合の延期を経て、27日の西武戦(マツダ)が交流戦開幕となる。3月の開幕からチームを支えてきたひとりが、ドラフト1位ルーキーの栗林良吏投手。守護神としてデビュー以来17試合連続無失点をマークし、ドラフト制後の新人記録を更新中だ。活躍の要因はどこに? 球団OBで元スター内野手の高橋慶彦氏が分析した。

栗林は17試合で17回2/3を投げ、わずか5安打、7四球。29三振を奪い、無失点に抑えている。さらに言えば、オープン戦も4試合に登板して無失点だった。まさに“ミスターゼロ”。当初、守護神の筆頭候補だったヘロニモ・フランスア投手が開幕前に右膝を手術して離脱。その穴を埋めて余りある活躍ぶりだ。

常時150キロ前後を計測するストレートにも威力があるが、高橋氏は「凄いのはフォークボール」と注目する。特徴について「落差もエグイが、それだけではない。プロの投手でもフォークと言えば、ワンバウンドになってもいいから、とにかく低く投げるのが普通だが、あの子はストライクも取れる。真っすぐを投げる感覚でフォークをコントロールできる」と指摘。「俺の現役時代で言えば、村田兆治さん、遠藤一彦さん、佐々木主浩もそうだったが、誰でもできるという芸当ではない」と伝説的なフォークの使い手になぞらえた。

これまでほぼ1イニング限定の栗林が唯一、回をまたいだのが5月8日の中日戦(バンテリンドーム)。4-3と1点リードで迎えた8回1死満塁という絶体絶命のピンチで塹江を救援すると、代打・井領を4球連続フォークで投ゴロ併殺打に仕留めた。続く9回も無死一、二塁のピンチを招いたが、滝野を速球とカーブで見逃し三振、続く4番・ビシエドにはフォーク5連投で空振り三振、高橋周もフォークで二ゴロに仕留め、得点を許さなかった。ここぞという場面で最も頼りになるのは、やはりフォークなのだ。

広島などで活躍した高橋慶彦氏【写真:編集部】

高橋氏「オープン戦最後の登板であっぷあっぷした、あれが良かった」

高橋氏は「オープン戦最後の登板であっぷあっぷした。あれが良かった。あれがなかったら、シーズンに入ってからやられていたのではないか。実戦でなかなかできない経験をオープン戦の最後にできて、しかも切り抜けた。俺はあれを見た時『この子はやれるかもしれん』と思った」とも述懐する。

栗林は開幕前、3月21日のソフトバンクとのオープン戦最終戦(マツダ)で9回に登場したが、先頭の明石に左翼線二塁打を浴び、牧原大、栗原を連続三振に仕留めたものの、上林に四球、長谷川に右前打を許し、2死ながら満塁と追い込まれた。周東に対してもカウント3-2となり、押し出しの不安が頭をよぎったが、最後は8球目の外角高めのフォークで見送り三振に切って取っている。

この投球を見て、開幕後の抑え起用に不安を覚えた関係者も多かったが、高橋氏は逆だった。新人にとって絶対的に不足しているのは、言うまでもなく経験。栗林は開幕前、絶好のタイミングで何試合分にも相当する経験を積むことができたというわけだ。怖いもの知らずに見える今の投球ぶりにも、それが生きている。

入団当初、首脳陣は先発起用も検討。「そちらも見てみたいが、現状では(抑えは)他におらんやろ」と高橋氏は言う。阪神・佐藤輝明内野手、DeNA・牧秀悟内野手、楽天・早川隆久投手、西武・若林楽人外野手らルーキーの活躍が目立つ今季。セ・リーグ随一の新人右腕は毎試合、最後を締めるべく爪を研ぎながら出番を待つ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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