核禁条約会議 コロナ禍で延期検討 長崎の被爆者ら落胆広がる

 新型コロナウイルスの世界的な流行により核拡散防止条約(NPT)再検討会議が再延期、それに伴い核兵器禁止条約の締約国会議も先送りされる可能性が判明した26日、長崎県内の関係者に落胆が広がった。被爆者の高齢化が進む中、核廃絶に向けた交渉が滞り、機運がしぼむことを警戒。両会議の早期開催を求める声が相次いだ。
 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)はNPT会議に被爆者を派遣する予定だった。田中重光代表委員(80)は「残念だがコロナ禍では仕方ない。年々高齢化する被爆者たちが来年現地に行けるかどうか」と懸念する。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの吉田文彦センター長(65)は、再三の延期により交渉に時間が空き「核兵器保有国と非保有国の溝はそのままに、話し合いの場がなくなっている」と問題視。「核不拡散への影響はないが、議論が前進することもない」とした。
 一方、同条約の締約国会議に非政府組織(NGO)として出席を予定する「県被爆者手帳友の会」の朝長万左男会長(77)は「コロナ禍でも必要なことはやるべきだ。オンライン開催などを模索して」と主張。県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(81)は「条約発効の熱が冷めないうちに開催を」と求めた。
 国内外で平和活動に取り組むナガサキ・ユース代表団9期生代表の中村楓さん(20)=長崎大3年=。昨年も活動したが、NPT会議の延期により傍聴はかなわなかった。「今年こそは被爆者や被爆2世の思いを受け止め、国際会議の場で伝えたいと思っていた。目標も、伝える機会も失われ、行き場のない悔しさがある」と涙ながらに語った。

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