松本、出場権取り戻す 積み重ねた努力結実 ライフル射撃男子五輪代表決定戦

立射で集中して銃を構える松本(自衛隊)=味の素ナショナルトレーニングセンター(日本ライフル射撃協会提供)

 夢舞台への挑戦権を取り戻した。一度は射止めながら、手放しかけた五輪切符。諦めずにコツコツと積み重ねてきた松本(自衛隊)に、勝利の女神は再び、ほほ笑んだ。「安堵(あんど)の気持ちが大きい。ようやく一区切りつけられた」。37歳の努力の男は胸をなで下ろした。
 五輪への挑戦は2008年北京から4大会目。19年11月に念願の出場権をつかんだが、昨年3月に五輪が延期となり、日本ライフル射撃協会から代表維持の条件が出された。以降、条件の「基準点」という敵と戦い続けなければならない不安定な日々。感情を顔に出さずに努力を続けたが、正直、苦しかった。
 3月に始まった代表を維持できるかどうか確認する記録会。男子3姿勢はやや高めの基準点を誰も超えられないまま、再選考は3回目までもつれた。最後の戦いとなった島田(自衛隊)との代表決定戦。25日のエアライフルは島田に約5点差をつけられたが「3姿勢は自分に分がある。許容範囲」と捉え、26日の3姿勢に臨んだ。
 だが、重圧に連戦の疲れも重なり「いつも通りにコントロールできなかった」。何とか粘って120発を終えると、エアと3姿勢の合計で島田に0.8点届かなかった。覚悟を決めかけていると、試合後の服装検査で島田が失格。思わぬ形で五輪切符が戻ってきた。
 長い競技歴の中でも苦しかった期間を乗り越えて立つ五輪の射場。「これで思い切り集中できる。メダル獲得を目指して全力で臨みたい」。気持ちを新たに、13年越しの夢舞台に向かう。

 【略歴】まつもと・たかゆき 島原市出身。島原工高でライフル射撃を始め、日大を経て自衛隊体育学校に入校。高校2年時の富山国体で初の日本一に輝いて以降、計12度の国体優勝を誇る。2018年ジャカルタ・アジア大会ライフル3姿勢銅メダル、全日本3冠。19年アジア選手権で日本勢最高の11位に入り、東京五輪に内定した。167センチ、66キロ。


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