インドに由来する新型コロナウイルス変異株が広がり始めている。対策を厚労省に助言する専門家組織の座長の脇田隆字(わきた・たかじ)国立感染症研究所長は5月26日の記者会見で「(インド株への)置き換わりが起こる可能性はかなり高いだろう」と警戒感を示した。インド株の持つ変異は、感染力やワクチンの効果に関わる免疫に影響を及ぼす可能性があり、現在日本で猛威を振るう英国株よりも感染力が強いとの指摘も出ている。
専門家は全国的な監視体制の強化などによって、国内での拡大を可能な限り抑えていくことを求めている。脇田座長は「国内で見つかったインド株はなるべく地域で見つけて囲い込むことが重要」と訴えた。インド株をめぐる脇田氏と記者団の主なやりとりは以下の通り。(共同通信=岩切希、須江真太郎、石川恒太)
インド由来の変異株については、水際対策が強化されています。現時点で分かっている範囲で、どのくらい感染力が強いとみていますか。
「英国の資料によると、二次感染リスクがある。家庭内の話だが、英国株は8・1%で、インド株は12・5%だった。1・5倍だ。完全なデータではないが、英国株よりも感染力がある。こうした、疫学的情報から示されている」
「ただ、インド株は英国株と比べて、世の中に出てきて時間が無く解析されていない。ただちに、どういうメカニズムで感染力が上がっているかの説明は難しいと思う」
今後、コロナ感染は、インド株に置き換わっていくでしょうか。
「感染力が強いので、かなりの可能性で今後、起きてくると想定している。ただ時間がどの程度かは、その予測までここで述べるのは難しい。ただ置き換わりが起きる可能性はかなり高いだろう」
変異株への置き換わりが進む中、改めて感染防止に重要な対策について教えてください。
「基本的対策として、マスク、手洗い、ディスタンス、3密回避。これは基本的に変わらない」
インド株に対して、マスクは有効でしょうか。
「もちろん、マスクをしていた方が、感染を効果的に抑制でき、リスクを下げられる」
「一方、『マスクをしていれば大丈夫、感染しませんよ』と言うメッセージではない。あくまでもリスクを減らす、ということ」
インド株への対策で、さらに、一般の人ができる対策はありますか。
「一般的な感染対策は変わらない。一方で感染力が強いので、3密の1つでもリスクがあれば、そこはなるべく避けることが必要だ」
インド株の追跡はどのように行われていますか。
「今回、検疫、水際対策が強化されて、流入は一定程度、防ぐことができる。一方、今国内に入っているインド株の症例を地域で見つけて、囲い込むのが重要な対策だ」
海外渡航歴がない人の感染も確認されています。インド株は、市中感染が起こっている、という認識でよいでしょうか。
「定義をどう考えるかによる。海外渡航歴のある人へリンクがつながらない症例がでているのは事実だが、それをもって、ただちに市中感染とは考えていない。まんえんしている状況があれば市中感染と定義されると思うが、専門家の中で、今、インド株が市中感染していると言っている人はいないと思う」
インド株の爆発的な感染拡大を防ぐために、どのように緊急事態宣言解除のタイミングを見極めていくべきでしょうか。
「感染者数のベースラインを下げることは必要。間違いなく感染の再拡大を抑制するためには下げないといけない。これは間違いない。下がった状態でいかに粘れるかが重要。下がったところですくに解除しないことが重要というニュアンスの話だ。なるべく下げて、下がった状態でなるべく粘るのが重要だ」
(終わり)