斜め上から覗き込めるような美しい渦巻銀河「NGC 5037」

【▲ 渦巻銀河「NGC 5037」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Rosario, Acknowledgement: L. Shatz)】

こちらは「おとめ座」の方向およそ1億5000万光年先にある銀河「NGC 5037」です。1785年にウィリアム・ハーシェルによって最初に記録されたNGC 5037は渦巻銀河に分類されていて、地球からは斜め上から見下ろすような角度で中心部分の明るいバルジやダストレーンが目立つ渦巻腕などを観測することができます。

撮影に用いられたのは「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」です。天の川銀河の隣にある渦巻銀河「アンドロメダ銀河(M31)」(およそ250万光年先)と比べてNGC 5037はおよそ60倍離れていますが、それでもハッブルはガスや塵が作り出した繊細な構造を詳細に捉えています。

広視野カメラ3は、2009年5月に打ち上げられたスペースシャトル「アトランティス」によって実施された、ハッブル宇宙望遠鏡に対する5回目にして最後のサービスミッションとなった「STS-125」で取り付けられたカメラです。赤外線可視光線紫外線の波長で天体を撮影できる広視野カメラ3は用途が広く、天体に関する多様な情報を得ることができます。

STS-125はハッブル宇宙望遠鏡の寿命を少なくとも2014年まで延長することを目的としていましたが、ミッションから12年、2014年から7年が経った2021年5月現在もハッブル宇宙望遠鏡は観測を続けています。冒頭の画像は広視野カメラ3による光学および赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として欧州宇宙機関(ESA)から2021年5月24日付で公開されています。

【▲ 2009年5月、スペースシャトル「アトランティス」によるSTS-125ミッションで修理とアップグレードを受ける「ハッブル」宇宙望遠鏡(Credit: NASA)】

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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Rosario, Acknowledgement: L. Shatz
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏

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