「私なら佐藤輝明をこう打ち取る」 大洋の伝説的エースがシミュレート「穴も多い」

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

「現状では穴も多い。打っているのはコントロールミスがほとんど」

新人離れしたパワフルな打撃でプロ野球界に新風を吹き込んでいる阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手。特に4月9日のDeNA戦で敵地・横浜スタジアムの右中間場外に飛び出した特大3号ソロは、あまりに衝撃的だった。そのハマスタを舞台に、DeNAの前身である横浜大洋ホエールズで長年活躍した伝説的エース、遠藤一彦氏が“サトテル攻略法”をシミュレートした。

遠藤氏は4月9日、横浜スタジアムでテレビ解説を務めていて、佐藤輝の場外弾を直接目撃した。「バットの芯を食った時の飛距離は半端ない。凄いホームランバッターになっていくでしょうね」と太鼓判を押す。

もっとも、現在は発展途上。現役時代の遠藤氏のように抜群の制球力、落差の大きいフォークボールがあれば、確率の高い攻略法はあると見ている。

「好きな高めよりボール1個分高い所を攻められると、ほとんど空振りしていますね。見送ればボールですが、好きなコースと紙一重だけに、つい手が出てしまうのでしょう」と指摘。「内角低めのカットボールも結構空振りしています」と付け加えた。

では、実際に対戦したならばどのように攻めていくのか。「基本的には球種に関わらず、インハイとインローを攻めるでしょうね。ベースの上にかからず、ボールゾーンにギリギリ投げ切れれば大丈夫。狙って打ってもファウルになります。十分内角を意識させてから、外角にフォークを落とすのも効果的だと思います」と語る。さらに「しっかりバットを振ってくる打者だけに、現状では穴も多い。打っているのはコントロールミスの甘い球がほとんど。打たれている投手は、攻略法をきっちり組み立てられていないか、もしくは組み立てていても狙った所に投げ切れていないことが多い」と強調する。

野球評論家の遠藤一彦氏【写真:荒川祐史】

当初は振り回していたバースだが、ミートを心掛けた2年目は打率大幅アップ

ただ、豪快に振り切る佐藤輝のスイングは、遠藤氏にかつてしのぎを削った強打者を思い起こさせる。現在も阪神ファンに“神”と崇められるランディ・バース氏である。「来日1年目の彼は大振りで、ブルンブルン引っ張りにかかっていた。僕はほとんど前へ飛ばさせなかったと思います」と語る。

ところが、「同僚の掛布(雅之氏)がレフトへホームランを打つ姿を参考にしたのか、2年目以降は外角を強引に振らず、ミートするようになった。それでも十分外野のフェンスを越えていくことを覚えたのです。打ち取るのが難しくなり、僕も外角球をレフトスタンドへ放り込まれた本塁打が3本あったと記憶しています」と振り返る。

確かに、バース氏は来日1年目の1983年は打率.288、35本塁打。翌1984年には本塁打は27本に減ったものの、打率が.326に大幅アップした。そして日本に慣れ切った1985、86年に2年連続3冠王に輝き、1985年の阪神日本一の原動力にもなった。2年連続最多勝(1983、84年)を含む6年連続2桁勝利(1982~87年)をマークした遠藤氏とは名勝負を繰り広げた。

「佐藤輝も相手投手との駆け引きを重ねながら、来季以降さらに進化する可能性があります」と遠藤氏。周囲が本当に驚かされるのは、来季以降なのかもしれない。(Full-Count編集部)

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