なべやかん遺産|「ゴモラ」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「ゴモラ」!

ゴモラ軍団。

「好き」の判断基準は強さ

「好きな怪獣は?」と質問されれば「ゴジラ」と即答する。では「好きなウルトラ怪獣は?」と聞かれると少し間を置いて考えてから「ゴモラかな」と答える。

子供の頃からウルトラシリーズに登場する怪獣達が大好きだった。多くの個性的な怪獣がいるが、好きになる怪獣はやっぱり強いやつ。その強さをどのように判断したかというと、話数の多さだった。

話数とは一話だけの登場でなく、前編・後編と話が続くものの事だ。シリーズの中では、ウルトラマンタロウに登場したバードンが前編・中編・後編で三話に登場し、長兄ゾフィーを倒したので地球上の怪獣では最強だと思っている。

だが、好きな怪獣ではあるが、鳥の怪獣だしほっぺたに金玉袋みたいなのをぶら下げているので、大好き怪獣一位にはならない。

鳥系の怪獣よりもゴジラのような恐竜的な怪獣の方が好きなので、そこも仕方がない。

怪獣作りの神がつくったゴモラ

初代ウルトラマンの中で一話完結せず前後編続いて登場したのがゴモラだった。ゴモラは強いだけでなく、デザインも造形も素晴らしい。

水牛のような立派な角と力強い尻尾。体全体もごちゃごちゃせず、わりとシンプル。物語も『キングコング』と同じようなストーリー。

人間のエゴによって見世物にされる事になり、悪者にされた挙げ句ウルトラマンに命を取られた実に可哀そうな怪獣だ。滅ぼされる事が怪獣の宿命、それを理解させられた作品だった。

ゴモラの着ぐるみを作ったのは高山良策さんだ。高山さんは怪獣作りの神的存在である。その神が作ったゴモラの頭部は現存している。

劣化はしているが角はFRP素材なので存在感は強烈だ。本物のゴモラを最初に見たのは、80年代に行われた特撮大会というイベントだった。

その後、高山さんのご自宅にお邪魔した事があり、そこでじっくり見させていただいた。

本物を見た時に「やっぱりゴモラはかっこいいな」と感じ、好きなウルトラ怪獣一位にしていた事が間違いないと確信した。

その後、他の怪獣の良さも理解していったので、好きなウルトラ怪獣と聞かれ答えるまでの間に少し間が出来てしまうのだが、それでも「ゴモラ」と答えている。

逸脱したデザインに変貌

初代ウルトラマンに登場以降、ゴモラは様々な作品に登場しているが、王道デザインからかなり逸脱したデザインに変貌している。

「俺の好きな怪獣をレイプしないでくれ」と過去の怪獣がリメイクされたりイメチェンして登場する度に言っているが、ゴモラに関しては今では「好きにしてくれ」って感じだ。

好き勝手されたゴモラは、本来のゴモラとしての良さはまるでないが、子供が喜びそうな怪獣デザインになっている事は間違いないだろう。自分が子供だったら、ひょっとしたら好きになっているかもしれない。

前回、ここ最近のゴジラの事でも書いたが、新種のゴモラも“ゴモラ”と名付けられなければ何も問題のない怪獣なのだ。でも、ゴモラブランドにすがりたい気持ちもわからなくもない。

初代ゴモラ(右)とレイオニックバースト(左)。色が赤くなった程度なのでまだ許せる。

オリジナルゴモラのかっこよさ

それでは全てではないが、新種のゴモラをバンダイソフビで見ていこう。

まずはオリジナルのゴモラ。これは非常にかっこよく、余計な物が体に付いていない洗練された見事なデザイン。

ウルトラギャラクシー大怪獣バトルに登場したゴモラは赤いゴモラで、ゴモラ レイオニックバーストという。この段階でおやおやと思ってしまうが、このゴモラはまだ良い、赤いだけだから。

『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』に登場したゴモラは、メカゴモラだ。これって…と思ったが、多分子供の頃だったら好きになっているはず。

でも、もっともっとデザインに凝ってもらいたかったな。初代メカゴジラを超えるのは難しいけど、それに匹敵するようなデザインで生まれ変わってもらいたい。今後に期待します。

デザインでしっかり揉んでちゃんとお金をかけて造形すればもっとかっこいいのが出来る気がするメカゴモラ。

ゴモラと呼んでほしくない!

続いて、EXゴモラ。大怪獣バトルシリーズ以降に登場するゴモラの強化形態だそうだ。ゴモラって強い怪獣だと思っているのに、強化形態ってのが嫌だな。ゴテゴテさせれば強そうだろって発想も嫌だ。ゴモラはシンプルだから良いのに、これこそレイプだ。

まぁここまでは、ゴモラテイストがあるが、この先はもう本当にどうでもいい。サイバーゴモラ、スカルゴモラ、アースゴモラ、初代ゴモラを見て青春時代を過ごした自分には耐えがたい存在。ゴモラを名乗って欲しくない。ゴモラでなければ何も問題がないが、好きにはならない怪獣だろう。

ヒーローも怪獣もシンプルなデザインが一番良い。シンプルだからこそ絶妙なバランスが不可欠になって来る。色んな物をくっ付けているのは誤魔化されている気がしてならない。

そして一番言いたいのは、昔の怪獣に頼るならちゃんとリスペクトしなさいって事。結局そこを超えられていないのだからね。

ゴモラの着ぐるみも高山さんの呪縛から抜け出せないでいる。そこを超えて来て欲しいな。好きだからそこ、ゴモラにはそんな期待を持っている。

これ以上、レイプするなよ~。そんなレイプされたゴモラでも、ゴモラである以上、ソフビを買ってしまっている自分が情けない。コレクターである自分が嫌になる。

サイバーゴモラ(右)とスカルゴモラ(左)。もうここまで行くとゴモラではない。怪獣デザイン的にも良くない。
EXゴモラはゴテゴテしすぎ。微妙なバランス感がイマイチなのでかっこよくなり切れていない。
もうどうでもよくなってしまうアースゴモラ。ゴモラを名乗らないでもらいたいな。

なべやかん

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