圧巻のOfficial髭男dism『東京リベンジャーズ』OP、怒涛の転調と“歌いづらさ”の意図とは

アニメソング(アニソン)を語る連載、第三回目はアニメ『東京リベンジャーズ』のテーマ曲であるOfficial髭男dism(ヒゲダン)の『Cry Baby』です。繰り返す転調が表すものとは?

ガチオタである一方、約10年のミュージシャン歴も持つ音楽ライターの私・曽我美なつめが紐解くアニソン連載。

今回ピックアップするのは、現在爆発的な勢いで人気度が高まりつつあるアニメ『東京リベンジャーズ』のOP曲、Official髭男dismさんの『Cry Baby』です。

ヤンキー×SFタイムリープというマンガの王道同士の要素でありながらも、これまでなかった異色の組み合わせとなる本作。先の読めない展開に、多くの人が今夢中になって追っているアニメ・マンガ作品の1つであることと思います。

DVD『東京リベンジャーズ』第2巻 画像

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週刊少年マガジンにて連載中のマンガ『東京卍リベンジャーズ』。『東京リベンジャーズ』としてアニメ化する際、主題歌をあの超国民的人気バンド・Official髭男dismが担当するというニュースも大きな話題を呼んでいました。

そうしていざアニメとあわせて5月7日に主題歌『Cry Baby』のフルMVが解禁となったのですが、公開早々からこの主題歌が凄すぎる!と今現在アニメファンだけでなく、多くの音楽ファンまでもざわつかせているのです。

一体何がそこまで大勢のファンをざわつかせているのか。今回はこの『Cry Baby』の凄さを、音楽的側面とアニメ的側面の両方から解説します。

怒涛の転調。『Cry Baby』の驚くべき音楽的魅力とは

まず最初にこの曲の語るべき点は、とにかく転調が多すぎる、という点について。

転調というのは、曲の中で音を構成するキーが変わることを指しています。本来であれば転調は、曲の雰囲気を大きく変える際に使われることが多い技法の1つ。

アニソンで言えば非常に分かりやすい例の1つとして、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の『God knows…』ラストサビ部分などが挙げられるでしょうか。

『涼宮ハルヒの詰合 TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」劇中歌集シングル』より

『涼宮ハルヒの詰合 TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」劇中歌集シングル』より

曲の中でも一際盛り上がる所や、曲の雰囲気をがらりと変えたい時。本来であればそのような意図を持って使われることが多いため、1曲の中に盛り込まれる転調は1回かせいぜい2回程度が普通です。

ですがこの『Cry Baby』に関しては単純にカウントしただけで、楽曲の1番の部分(アニメでOPとして使われている箇所)だけでもなんと最低でも5回の転調がある様子。

曲をフルで聞いた場合またもう一度サビからAメロに戻り、間奏後の短いCメロの中でもまた転調を重ね、最後のサビではラストにさらに転調して、最初のサビから歌詞をプラスし曲を終えるという形で、曲全体を見ても下手をすれば両手では足りないほど怒涛の転調を重ねているのです。また驚くべきことに、この曲を作った髭男のボーカル・藤原聡さんと東リベ原作者の和久井健先生の対談(※東京リベンジャーズ公式サイトに掲載)によると、中にはこの転調の展開は偶然の産物によって出来たものもある様子。

いくら偶然の賜物とはいえ、それをここまでのポップソングに昇華してしまう髭男・藤原さんの楽曲センスには驚かされるばかりです。ですが一方で上記の対談の中で藤原さんも語っているように、多すぎる転調のせいで「カラオケのキーを無理やり変えられているような気分になる」という感想を持つリスナーもいる様子。

そのため非常に「歌いづらい」楽曲として、音楽ファンの間ではちょっとした話題にもなったんだとか。

TVアニメ『東京リベンジャーズ』ノンクレジットOP【Official髭男dism「Cry Baby」】

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「歌いづらさ」は意図的?ストーリーとのリンクも

しかしこの転調が盛りだくさんの『Cry Baby』、実はちゃんと意図があった上での曲構成でもある様子。

髭男の藤原さん曰く曲の中での転調は、アニメの中で主人公であるタケミチがタイムリープを繰り返す事に準えているんだそうです。

何度もタイムリープを繰り返し、凄惨な未来を変えるため。大好きだった人たちを守るため、過去の臆病だった自分へのリベンジを果たそうとするタケミチ。そんなタケミチの戦いを鮮やかに描いた歌詞も一緒に噛み締めることで、より東リベの世界観にも浸る事ができるように思います。

さらに楽曲のPVもすでに解禁となっているのですが、Official髭男dismのメンバーが楽曲を演奏しているこちらの映像。バックの廃棄処分場のような光景に、どことなく既視感を覚えた方もきっといるはず。

そう! 『東京卍リベンジャーズ』アニメ化が解禁となった際の、こちらのファーストイメージビジュアル。廃材置き場に佇む東卍メンバーの姿を彷彿とさせるような、そんなPVともなっているのではないでしょうか。

楽曲の曲構成や歌詞、そしてPVまで。様々な要素を絡めて『東京卍リベンジャーズ』の世界観が細部まで盛り込まれているOfficial髭男dismによる『Cry Baby』。強い東リベ愛が垣間見える楽曲もぜひ、何度も聞いてお楽しみ頂ければと思います。

Official髭男dism - Cry Baby[Official Video]

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Official髭男dismプロフィール

Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)

2012年結成、愛称は「ヒゲダン」。

このバンド名には髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクす るような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたいという意思が込められている。

2015年4月1stミニアルバム「ラブとピースは君の中」をリリースし、デビュー。

2018年4月Major 1st Single「ノーダウト」でメジャーデビューを果たした。

ブラックミュージックをはじめ、様々なジャンルをルーツとした音楽で全世代から支持を集め続けている。

(Official髭男dismオフィシャルホームページより引用)

メンバー

Vo/Pf:藤原聡

Gt:小笹大輔

Ba/Sax:楢﨑誠

Drs:松浦匡希

アニメ『東京リベンジャーズ』概要

TVアニメ『東京リベンジャーズ』

MBS・テレビ東京・BS朝日・AT-X他にて放送中

■スタッフ

原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社「週刊少年マガジン」連載)

監督:初見浩一

シリーズ構成:むとうやすゆき

キャラクターデザイン:大貫健一/太田恵子

メカ・プロップデザイン:福島秀機

美術監督:緒続学

美術設定:小倉奈緒美 谷内優穂

色彩設計:辻田邦夫

撮影監督:山本弥芳

3Dディレクター:平将人

音響監督:飯田里樹

音楽:堤 博明

オープニング主題歌

「Cry Baby」Official髭男dism

エンディング主題歌

「ここで息をして」eill

アニメーション制作:ライデンフィルム

■キャスト

花垣武道(タケミチ) :新 祐樹

橘 日向(ヒナタ・ヒナ):和氣あず未

橘 直人(ナオト):逢坂良太

佐野万次郎(マイキー):林 勇

龍宮寺堅(ドラケン):鈴木達央

場地圭介:水中雅章

松野千冬:狩野 翔

三ツ谷隆:松岡禎丞

林田春樹(パーちん):木村 昴

林 良平(ぺーやん):野津山幸宏

河田ナホヤ(スマイリー):河西健吾

武藤泰宏(ムーチョ):小野大輔

千堂 敦(アッくん):寺島拓篤

山本タクヤ:広瀬裕也

鈴木マコト:武内駿輔

山岸一司:葉山翔太

エマ:内山夕実

羽宮一虎:土岐隼一

稀咲鉄太:森久保祥太郎

半間修二:江口拓也

清水将貴(キヨマサ):日野 聡

長内信高:竹内栄治

■イントロダクション

人生どん底のダメフリーター花垣武道(タケミチ)。 中学時代に付き合っていた人生唯一の恋人・橘日向(ヒナタ)が、 最凶最悪の悪党連合”東京卍會”に殺されたことを知る。

事件を知った翌日、駅のホームにいたタケミチは 何者かに背中を押され線路に転落し死を覚悟したが、 目を開けると何故か12年前にタイムリープしていた。

人生のピークだった12年前の中学時代にタイムリープし、 恋人を救うため、逃げ続けた自分を変えるため、 人生のリベンジを開始する!

(TVアニメ『東京リベンジャーズ』公式サイトより引用)

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