チーム最多4勝目の鷹マルティネス 巨人封じの“ゲームプラン”と王者の“強み”

ソフトバンクのニック・マルティネス【写真:藤浦一都】

「真っ直ぐを仕留められるチームなのでチェンジアップは多めに投げていこう」

■ソフトバンク 8ー3 巨人(29日・PayPayドーム)

ソフトバンクは29日、本拠地PayPayドームで行われた巨人戦に8-3で大勝し、2019年から続く巨人戦の連勝を14にまで伸ばした。長谷川が2本塁打を放つなど今季最多の計5本塁打。投げては先発のマルティネスが7回まで3失点と好投して、チームトップの4勝目をマークした。

立ち上がりにつかまった。初回先頭の松原に中前安打を許すと、ウィーラーには甘く入ったカットボールをバックスクリーン左に運ばれた。わずか4球で、いきなり2点を先制された。波乱の展開を予感させる立ち上がりだった。

ただ、工藤公康監督の受け止め方は違った。

「初回打たれるまでは、全てを出すよりどこのボールが通用するか、探りを入れている最中での本塁打だった。そこからしっかりスライダー、チェンジアップを使っていきながら抑えていけた。まだ引き出しが残っていた分、そんなに焦る必要はないかなと思っていました」

まだ、手探りの段階での失点であり、心配するほどではない。持ち球を駆使していけば、きっと抑えられるはず。そんな見通しどおりに、マルティネスは立て直していく。

「崩れることなくプラン通りに甲斐が立て直してくれた」

3番の吉川から3人で打ち取ると、その後はテンポ良くアウトを積み重ねていく。5回まで3安打2失点。味方打線が次々に援護点をプレゼントし、右腕も巨人打線をねじ伏せていく。150キロを超える真っ直ぐにカットボール、チェンジアップ、カーブを組み合わせた。6回に4連打で1点を失ったものの、7回まで投げて7安打3失点。先発としての役割を十二分に果たした。

「初回はつまづいたけど、崩れることなくプラン通りに甲斐が立て直してくれた。チェンジアップだけでなく、全体的にボールは良かった。ウィーラーの1球だけ。それ以外は良かった」

試合後にこう振り返ったマルティネス。この中で語っている正捕手・甲斐との間で組み立てた巨人打線封じの「ゲームプラン」についても、その一端を明かしている。

「巨人はいい打線。真っ直ぐを仕留められるチームなのでチェンジアップは多めに投げていこうと話していた。相手の反応を見ながら、チェンジアップに合っていないというのがあったと思う。そこをしっかり甲斐が引き出してくれた」

感情を表に出すシーンも目立つが「1人のファンになるぐらいの気持ち」

この日、特に威力を発揮したのが130キロ台前半のチェンジアップ。初回の吉川や2回の丸を三振に切るなど、要所で威力を発揮した。試合前からマルティネスと甲斐のバッテリーはチェンジアップを多めに配すプランだったという。その中で、相手打者たちの反応を感じ、甲斐のリードによりその比率を高めたのだという。

これでチームトップの4勝目をマークしたマルティネス。今季、日本ハムからソフトバンクに移籍した右腕だが、目立つのが、その感情を表に出すシーンの多さだ。この日も5回に長谷川がフェンス際のファウルフライを好捕すると雄叫びをあげてガッツポーズ。味方が得点を奪えば、ベンチ内でも笑顔を浮かべて大はしゃぎ。そんな自身を「やっぱり興奮するし、味方が点を取ると嬉しい。ベンチに戻ってきた時は、僕は1人のファンになるくらいの気持ちなんだ」と語る。

新天地に移って戦う今季。2年連続のリーグ優勝、5年連続の日本一を狙うソフトバンクの強さの要因について「チーム内でのいい意味での化学反応があって、みんなが混ざり合っている。みんなが何をすべきか、何をしないといけないかをすごく理解している。自分もその一部になれている。それが凄いと思う」と感じるという。

チームの勝ち頭となり、安定感溢れる投球を続けているマルティネス。いまやホークス投手陣にとって不可欠な存在となっている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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