阪神ドラ6・中野は “稼頭央級” 伊勢孝夫氏が絶賛「優勝の可能性は一気に高まった」

攻守で首位快走に貢献する阪神・中野

虎のルーキーはテルアキだけじゃない。阪神・中野拓夢内野手(24)が30日の西武戦(メットライフ)でプロ4度目の1試合3安打をマーク。2週間ぶりに打率を3割の大台に乗せた。ドラフト6位入団ながら今や正遊撃手の座を手にした〝掘り出し物の新戦力〟に本紙評論家の伊勢孝夫氏も「稼頭央級」と大絶賛。16年ぶりリーグVのキーマンはこの男なのかもしれない。

転んでもただでは起きない。前夜は0―1の8回無死一塁の場面で、ベンチからの指示に応えられずスリーバント失敗。矢野監督も「あそこで送れなかったのは流れ的に痛かった」と苦言を呈した。

そんなショックを引きずるどころか、一夜明けの中野は3安打1盗塁1打点1得点1犠打で9―8の勝利に貢献。「どうしても取り返したいという気持ちで試合に臨んだ。それがいい結果につながって良かったです。持ち味の積極性は出せているので、継続的にやっていきたい」と胸を張った。指揮官も「昨日、ああいう形があったけど、すぐに取り返せたのは大したもの。これが当たり前っていう選手に成長してほしい」と孝行息子に賛辞を送った。

4月上旬にレギュラー定着してからは主に8番で起用されてきたが、5月19日に糸原が下肢のコンディショニング不良で出場選手登録を抹消されると、2番を任されるようになった。12球団屈指の破壊力を誇る中軸につなぐ大事な役回りも無難にこなし、この日の3安打で打率も3割に到達。規定打席も見えてきた。

ドラフト6位ながら虎の懸案だった正遊撃手に定着した社会人出身内野手を称賛する声は球界内外で日に日に高まっている。本紙評論家の伊勢孝夫氏も中野の潜在能力を高く評価する一人だ。

特に目を引くのは守備力の高さだと言い、5月13日の中日戦(甲子園)の9回を例に挙げ「先頭のビシエドの放った三遊間への深い当たりを逆シングルで好捕し、そのまま体勢を変えることなく一塁手のミットにドンピシャの送球でアウトにしたシーン。体のバネ、肩の強さ、送球の精度。どれを取ってみても超一流やった。遊撃であんなプレーができるのは松井稼頭央(45=現西武二軍監督)くらいしか見たことない」と獅子のレジェンドに匹敵すると称賛。その上で「長年、阪神が悩み続けてきた『鳥谷の後継者』がようやくでてきたという印象。中野の加入で阪神の今季優勝の可能性は一気に高まったと思う」と力説した。

低い下馬評や手痛いミスも跳ね返し、リーグVに欠かせない存在となった24歳。シンデレラストーリーは、まだ始まったばかりだ。

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