【日本ダービー】馬匠渡辺「エフフォーリアは競馬に勝って勝負に負けた」

火の出るような叩き合いは首の上げ下げの勝負に

【渡辺薫&柏木集保「私たちはこう見た」 日本ダービー】

渡辺 無敗で2冠制覇を目指したエフフォーリアは惜しくもハナ差2着。まずはこの馬から振り返ろうか。

柏木 人馬ともに落ち着いていましたよね。特に鞍上の横山武史ジョッキーは、ライバルのサトノレイナスが4コーナーで早めに先頭に並びかけて行った時も、逆にポジションを下げていたくらいで、仕掛けのタイミングも決して早くありません。最後は首の上げ下げになりましたが、これはもう“運”だけ。乗り方にはひとつもミスはなかったと思います。

渡辺 そうだな。やはり皐月賞を3馬身差で圧勝した実力馬。ダービーでもその貫禄を存分に示す内容だったし、ジョッキーもプレッシャーに負けるどころか、むしろ騎乗ぶりが光っていた。残り300メートルの地点では完全に勝ちパターンに持ち込んだ。競馬に勝って勝負に負けたということだろう。一番強い馬はやっぱりエフフォーリアだよ。

柏木 そうですね。レースを2分割すると、前半の6ハロンが1分12秒7で後半のそれが1分09秒8。後半のほうが圧倒的に速くて、エフフォーリアは上がり3ハロン33秒4。メンバー最速タイでまとめています。しかも自身の走破タイムも2分22秒5のダービーレコード。数字面でもケチのつけようはありません。

渡辺 それを負かしたシャフリヤールは、毎日杯を1分43秒9のレコードで勝っている。ここ一番でそのスピードと切れがモノをいったということだろう。もちろん、ポテンシャルそのものが高いのは言うまでもない。

柏木 この上がりを差し切ったんですから、もう褒めるしかないですよ。ただ、上がり3ハロンそのものはエフフォーリアと全く同じ。このあたりは最後の最後で爆発力が上回ったということでしょう。実際、全兄のアルアインと比較すると、弟のほうがシャープな印象を受けます。

渡辺 鞍上の福永は昨年のコントレイルに続いてダービー連覇、そして通算3勝目。勝ち方を知っているというのか、そのあたりも勝敗を分けた一因かもしれないな。

柏木 牝馬の参戦ということで注目を集めたサトノレイナスは5着。これはどう見ますか。

渡辺 早めに先頭に立つ形になってしまったが、16番枠でなければ違ったスタイルの競馬になっていたんじゃないかな。脚をためる形なら勝ち負けになっていた可能性もあるし、内容とすれば立派だったよ。

柏木 ルメールジョッキーは流れを読んで早めに先団にとりつきました。これは間違ってなかったと思います。しかし、馬はマイル戦しか経験がありません。結果的には初めての距離もこたえたんじゃないでしょうか。

渡辺 ステラヴェローチェは皐月賞に続いて3着。直線勝負に懸けた乗り方が功を奏した格好だが、ほとんど大勢が決まった後だった。むしろ、将来性では4着のグレートマジシャンかな。勝ち馬には毎日杯の時より離されてしまったが、馬っぷりは目立った。秋が楽しみだよ。

柏木 こちらも勝ち馬同様にダービーが4戦目。このキャリアで通用したんですから、今後が本当に楽しみです。

渡辺 タイトルホルダーは最後でバテ気味。距離が延びていいかと思っていたけど、2000メートルくらいのほうが合っているのかな。ワンダフルタウンは青葉賞から時計を詰めてはいるが、レコード決着では対応できなかったようだ。

柏木 そうですね。上位勢はみんな素晴らしい走りを見せてくれましたが、4月くらいから芝のレースは高速決着が目立ちます。キャリアの浅い馬が多いですから、この後にダメージがなければいいのですが…。見応えのあるダービーでしたけど、そのあたりはちょっと気になりました。

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