コロナ禍や負傷…離脱者が止まらない西武 それでも光明もたらす“3人の躍動”

30日の阪神戦で5号3ランを放った西武・愛斗(中央)【写真:荒川祐史】

木村の故障でチャンスつかみ長打力アピールする愛斗

■阪神 9ー8 西武(30日・メットライフ)

開幕直後から主力に故障者が相次いでいた西武が、さらなる“災難”に見舞われている。5月27日には主将・源田壮亮内野手の新型コロナウイルス感染が判明。翌28日には、ザック・ニール投手と木村文紀外野手が濃厚接触者に特定された。加えて30日に本拠地メットライフドームで行われた阪神戦の守備中には、ドラフト4位ルーキーで1番打者に定着していた若林楽人外野手が左膝を負傷し、担架に乗せられて退場した。

戦線離脱者の続出は、チームにとって痛手には違いない。しかし、代わりに出場機会を増やし、台頭しつつある選手もいる。6年目・24歳の愛斗外野手もそのひとりだ。

30日の阪神戦では「8番・右翼」で先発し、2点ビハインドの2回1死一、二塁では阪神先発・村上から逆転5号3ラン。カウント0-1から95キロのスローカーブに体勢を崩されることなく左翼席へ運んだ。7回には左犠飛。チームは結局8-9で惜敗したものの、2打数1安打2四球4打点と気を吐いた。

今季は打率.243、23打点で、5本塁打は森の6本に次ぎ、山川と並ぶチーム2番目に多い。「いつも初回の打席に入る前に中村(剛也内野手)さんにアドバイスをいただいていて、今日もそれが役に立ちました。中村さんに感謝です」と好調の秘訣の一端を明かした。

昨季は故障もあって1軍出場わずか7試合、打率.154(13打数2安打)に終わった。今季は4月8日に1軍初昇格を果たすと、翌9日のロッテ戦(ZOZOマリン)でいきなりプロ初本塁打を含めた1試合2発。続く10日の同カードでも3号ソロを放ち、長打力をアピールした。右翼レギュラーの木村は4月に腰痛で離脱し、さらに復帰後も今度は源田の濃厚接触者となったことで、愛斗が存在感を増している。愛斗自身も源田と接触があったことから、5月27日の広島戦(マツダ)ではベンチを外れて宿舎待機となったが、幸運にも離脱を免れた。若林の故障が長引くようなら、なおさら外野に不可欠な存在となる。

呉念庭は山川復帰後も二塁でスタメン、山田遥楓は源田の“代役”に

愛斗だけでなく、6年目・27歳で右投左打の呉念庭(ウー・ネンティン)内野手は、今のところ規定打席数をクリアし打率.285、4本塁打25打点。山川が開幕早々左脚を痛めて抹消されると代わりの一塁手を務め、山川復帰後は二塁手としてスタメン出場を続けている。

守備で貢献しているのは、7年目・24歳の山田遥楓(はるか)内野手だ。昨季ゴールデングラブ賞を獲得した二塁手の外崎や控えの山野辺が4月上旬に立て続けにケガで戦列を離れたことから、代役の二塁手として白羽の矢が立った。山川が復帰し、呉が二塁に回ってきたことで出場機会を失うかに見えたが、今度は源田離脱でショートを任されることに。5月30日の阪神戦では、4回2死二、三塁で大山が三遊間へ放った痛烈なライナーを逆シングルでジャンピングキャッチ。美技でチームを鼓舞した。

球界ナンバーワン遊撃手の源田と互角とは言えないまでも、内野のどこを守っても高いレベルでこなす。昨季の1軍出場は8試合に過ぎなかったが、今季はすでに41試合。打率.212、0本塁打6打点が示す通り打撃が課題だが、試合中誰よりも大声を張り上げるムードメーカーでもあり、同じ佐賀県出身の辻監督は「チームに力を与えてくれている」と評する。

出場機会が増え、確実に経験と実力を蓄えている3人。シーズン終盤まで優勝争いに生き残り、主力がそろった時、「結果的にコロナのお陰でチーム力が上がった」と言われるくらいになれば何よりだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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