(株)コロナの女性社員が子育てママ視点の製品開発でキッズデザイン賞を受賞、その背景と取り組み

キッズデザイン賞のトロフィーを持つ諸橋徳子さん

2020年8月、株式会社コロナ(本社:三条市)が開発した省エネ給湯機「エコキュート」が、第14回キッズデザイン賞を受賞した。従来のエコキュートに子育てママの視点から改良を加えたもので、「ふろ自動一時停止」「音声モニター」などの機能が搭載されている。女性技術者のリアルな出産・子育て経験がきっかけとなった、その背景や同社の取り組みを取材した。

出産して気づいた、子育てママが抱く暮らしの中の不安

開発を担当したのは、現在3歳のお子さんを育てながら勤務している諸橋徳子さん(33歳)。エコキュートの開発を担当するエコ商品開発グループに所属しており、育休中にお風呂に子供と一緒に入った際、循環口から出る熱いお湯が子供に当たらないか不安を覚え、保温追いだき機能を一時停止する「自動一時停止機能」を思いついた。

エコキュート開発の中心メンバーとして担当

復職後上司に提案し、開発がスタート。元々コロナ社は、1980年代から女性目線を取り入れた調理家電の開発をしており、3~4年前からはエコキュートに高齢者向けの機能を搭載するなど、多様なユーザーに目を配る土壌があった。

子育て目線の開発&広報戦略で、ターゲットにリーチ

開発に一番苦労したポイントが「機能の精査」だ。部署から社内、そして市場とニーズを広く探ったところ、たくさんの要望が表面化。最終的に「子供の入浴中に急に熱いお湯が出てこないよう一時停止」「子供が一人で入浴した時に安全か確認できる音声モニター」などの機能が採用された。

これまでにない子育てママ目線のエコキュートという切り口から、広報戦略では、子育て雑誌に生活の“あるあるネタ”を例に出しながらイラストを用いたエコキュート紹介記事を掲載し、親しみやすい動画も作成。PR課リーダーの小林碧さんは、「『使ってみたい』『入浴時の不安が解消された』と好意的な反響が届きました」と手応えを実感している。

<赤ちゃん・子どものいるおうちのおふろの“困った”を解決!> https://www.corona.co.jp/eco/ay3_lp/index.html

エコキュート

業界に新風を起こし、キッズデザイン賞を受賞

エコキュートと同時に開発された「コロナ快適ホームアプリ」も、女性目線から画面の視認性を高めたり、デザインに可愛さを取り入れたものに。「入浴中の子供の安全はもちろん、主婦目線でいかにお金を節約できるか、離れた実家の両親が入浴中に事故に遭っていないかなども確認できます」と諸橋さん。今回の開発はキッズデザイン賞、さらには社内での社長賞受賞にもつながった。

業界内でも子育て目線を重視した同様のサービスはほとんど存在しておらず、諸橋さんは「今回、開発において女性目線という考え方が想像以上に受け入れられることがわかりました。さらに女性が使いやすい機器を開発していけたら」と、今後の開発への弾みになったようだ。

男女共に働きやすい環境が、活躍の礎に

株式会社コロナでは、以前より新潟県が登録する男女が共に働きやすい企業である「ハッピー・パートナー企業」や、厚生労働省が子育てサポート企業「くるみんマーク」の認証を受けるなど、女性が働きやすい環境づくりに力を入れている。現在は独自の取り組みとして、小学校未就学までの子どもを持つ社員を対象とした選べる9パターンの時短制度を採用。部署を横断した女性活躍開発プロジェクトも立ち上がるなど、社員一人ひとりのライフスタイルや特性を生かした働く環境づくりに積極的だ。

広報室統括の杉本昌義さんは「メーカーとして開発することが最大の使命であり、そこに性差はありません。環境を整えることで、男性も女性も活躍していってくれたら」と、環境整備に伴う社員の奮起に期待を寄せている。

【関連リンク】
株式会社コロナ 公式ホームページ

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