堀江貴文氏が北九州に新球団設立 九州アジアリーグ参入へ

オンラインで記者会見する堀江貴文氏。新球団「福岡北九州フェニックス」の設立を正式発表した=5月26日(提供写真)

 ある時は投資家、ある時は著作家、そしてある時はタレント。

 多彩な顔を持ち「ホリエモン」の愛称で親しまれる堀江貴文氏が、今度はプロ野球に参入することになった。

 5月26日にオンラインで記者会見し、新球団「福岡北九州フェニックス」の設立を発表。まずは、プロ野球独立リーグの「九州アジアリーグ」への参入を目指すという。

 昨秋に設立された「九州アジアリーグ」は、今年3月に開幕。現在は熊本と大分を本拠地とする2チームが直接対決するほか、プロ野球ソフトバンクの3軍や四国アイランドリーグなどとの交流戦を含め、年間80試合程度を行う。

 そこへ第3の球団として、北九州市を本拠地に参画する。現時点ではチーム編成に至っておらず、これからスポンサー探しも始めるというから、本格始動は来年以降になる。

 これに先立ち、今春には埼玉や北関東を本拠地に活動するBCリーグのBC埼玉にアドバイザーとして就任、武蔵ヒートベアーズへの出資も明らかにしている。野球への情熱は相当熱いものがあるようだ。

 堀江氏と野球といえば、2004年の近鉄球団買収問題が思い出される。

 当時、経営難に陥った近鉄球団がオリックスとの合併で基本合意。これに伴いプロ野球の再編問題が起こり、セ・リーグとパ・リーグを10球団程度に縮小する1リーグ制を経営側が推進すると、選手会やファンが猛反発する。そこに登場したのが新球団設立を掲げた「ホリエモン」こと堀江氏だった。

 同年7月に大阪ドーム(現京セラドーム大阪)の近鉄対オリックス戦の右翼席に現れると大歓声を浴びた。

 選手会のストライキが行われるなど、異様な事態は仙台に新球団を立ち上げることにより2リーグ制存続で決着を見た。そこで、堀江さんが「仙台フェニックス」を設立したが、楽天を率いる三木谷浩史氏に敗れ、野望はついえた。

 今回の球界参入は自身が主催する「オンラインサロン」での会話がきっかけだったという。

 「人生、面白い事やっていこうよ。スポーツとは楽しい時間を過ごすコンテンツ、独立リーグなんてどう?」

 こうした会話の中にいたのが、かつて“ホリエモンロケット”のスポンサーでもあった竹森広樹氏である。北九州市に拠点を置く同氏の賛同も得て夢は現実のものとなっていった。

 もちろん、敏腕実業家でもある堀江氏が夢を語るだけで終わるわけがない。まずは「たまにしか野球を見ない人たちに、いかに球場に来てもらうか」とファン層の開拓を目指し、その先にあるアジアの野球界の底上げとメジャーリーグに対抗する「アジアスーパーリーグ」の構想を明らかにした。

 北九州での旗揚げとなれば、福岡に本拠地を置くソフトバンクとの強調路線も必要となる。

 ソフトバンクの総帥・孫正義オーナーも、将来の目標としてメジャーチャンピオンと真のワールドシリーズ実現を掲げている。

 現時点では王者のソフトバンクに対して新参者の位置づけだが、両者の今後の戦いも興味深い。

 2年前、ソフトバンクの王貞治球団会長は、現在の12球団を16球団に拡張するリーグ再編に言及したことがある。

 野球のすそ野を広げることが球界の発展に望ましいというもので、この発言に「すでにそうした動きはある」と反応したのが堀江氏だった。

 これまでも、既成概念を打ち破ってきた堀江氏だが、その肩書の中には「日本ゴルフ改革会議委員」や「「Jリーグアドバイザー」などスポーツ関連のものも多い。

 任命側からすれば独自の視点や発想から組織の変革を期待してのものだ。こうした経験を踏まえて堀江氏側もスポーツをビジネスとして捉え、新しい野球モデルを生み出そうという試みの第1弾が「福岡北九州フェニックス」の誕生である。

 今後は「球団の顔」としてスポンサー獲得や地元への協力要請など多忙な日々が続く。

 将来的には新球場建設まで視野に入れている。選手集めのため、九州での合同トライアウトなども予定されている。

 そこで個人的に気になる人材がいる。かつて阪神、日本ハム、大リーグで活躍した新庄剛志氏だ。

 福岡県出身。結果は不合格だったが、昨年には本家プロ野球のトライアウトを受けたくらいだから、野球への情熱はある。

 堀江氏が好む派手さもあり、話題性は十分で集客も期待できる。選手が駄目なら監督もありか。

 堀江氏の参入が野球界にどんな化学反応を引き起こすのか。時代はいつの世も「風雲児」の出現を待っている。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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