なぜ証券口座を開く必要がある?証券会社選びの決め手を突き詰めて考える

この20年くらいで金融の自由化は大きく進み、今では銀行でも投資信託をはじめとするリスク商品を買えるようになりました。そうであるにも関わらず、なぜ証券会社に口座を開くのでしょうか。そこを突き詰めて考えることが、証券会社選びでは大事です。


まずは銀行の取扱商品を調べてみよう

コロナ禍でリモートワークが増えたからなのか、昨年からインターネット証券会社を中心にして新規口座の開設件数が大きく増えていると聞きます。一部の証券会社では、社員に対して「大入り袋」が出たなどという話もありました。

なぜ証券会社に口座を開く人が増えたのでしょうか。

リモートワークが増えたお陰で日中、上司の目を気にせずにトレードできるようになったとか、本を読んで学ぶ時間が増え、自分の老後が気になって資産運用の必要性を改めて認識したとか、いろいろ理由はあると思います。

でも、「投資したいから証券会社に口座を開こう」と思っている人は、まず自分が今、口座を持っている銀行の取扱商品を調べてみてください。実は銀行も結構、運用するための金融商品を取り揃えています。

銀行は1998年から窓口で投資信託を販売できるようになりました。2021年4月末の公募型投資信託全体の純資産総額は151兆7,698億円ですが、このうち20.85%を占める31兆6,436億円は、銀行の窓口を通じて販売されています。

大手メガバンクの取扱ファンド本数は500本超

たとえば三菱UFJ銀行が取り扱っている投資信託は、全部で560本もあります。一部、販売停止ファンドも含まれているので、このすべてを購入できるわけではありませんが、それでも結構な本数です。

これらの投資信託を通じて投資できる資産クラスも国内株式、国内債券、海外株式、海外債券、不動産投資信託、さまざまな資産クラスに分散投資したバランス型など多岐に渡っています。複数の金融機関に口座を持つと、管理が面倒になるというデメリットがありますから、資産運用は投資信託だけで十分という人は、自分が口座を持っている銀行で投資信託を買うという考え方もあります。その場合、敢えて証券会社に口座を持つ必要はないかもしれません。ちなみに銀行でも、NISAやつみたてNISAなどの非課税口座を用いた資産運用にも対応しています。

したがって証券会社に口座を開くとすれば、証券会社でしか出来ない取引をしたいとか、あるいは銀行で扱っている投資信託だけでは、自分が求めているポートフォリオを組むことが出来ないという場合、と割り切って考えるのでも良いかも知れません。

証券会社だからできる取引

証券口座を作ろうと思った人は投資に興味を持った人が多いですよね。では、証券会社でなければ出来ない投資とは何でしょうか。ざっと挙げてみましょう。

(1)国内株式(IPOを含む)
(2)米国株式など海外株式投資
(3)国内債券
(4)外国債券
(5)デリバティブ(先物取引、オプション取引)
(6)FX(外国為替証拠金取引)
(7)CFD

このあたりが、証券会社では扱っているけれども銀行では扱っていない投資商品になります。

これらの投資商品をポートフォリオに入れたいと思うのであれば、証券会社に口座を持つ必要があるのですが、結構、ハイリスク・ハイリターン型の商品も多くあります。国内債券や外国債券は、そのなかでも比較的リスク・リターンのレベルは低めですが、現状、世界的に金利水準が低いので、初心者がこれらに敢えて投資する意味はあまりないように思います。

株価指数先物取引やオプション取引などのデリバティブ、FX、CFDは商品の特性上、長期投資というよりは、かなりの短期トレード向けになります。

もちろん、この手の取引をしたい人にとっては、少額資金で大きな取引が出来るので、非常に投資効率が高く、大きなリターンも期待できますが、マーケットが大きく動くと、投資した資金の過半を一気に失うくらいのリスクがあるので、それだけのリスクを許容できる人向けです。正直なところ、投資経験の浅い人はあまり手を出さない方が無難でしょう。

証券会社選びの決め手は外国株式

このように、証券会社でなければ出来ない投資から、さらに消去法的に絞り込んでいくと、結局のところ残った投資商品は、国内外の個別株投資になります。つまり、国内外の個別株をポートフォリオに組み入れたいというニーズが出てきて初めて、「どの証券会社に口座を開くか」という話になります。そして、その際に決め手となるのは、外国株式です。

というのも国内株式の売買については、情報が豊富にあるだけでなく、売買手数料についても各証券会社、極限まで下げてきているので、正直、どこで取引しても大差がなくなってきています。

ただ、外国株式は違います。取扱銘柄数、外国株式に関連する投資情報の量、そしてリアルタイムで売買できるかどうかという点も含めて、しっかりチェックする必要があります。

特に最近は米国株式投資が人気を集めていますし、オンライン証券会社なども米国株式の取扱いに力を入れてきています。取扱銘柄数が多く、売買手数料が安く、かつリアルタイムで取引できる証券会社を選ぶとよいでしょう。

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