ローマン宇宙望遠鏡はいかにしてダークエネルギーの謎に挑むのか?

【▲ NASAのローマン宇宙望遠鏡のイラスト(Credit:NASA)】

ローマン宇宙望遠鏡(正式名称ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡)は、NASAが2020年代半ばに打ち上げを予定している次世代宇宙望遠鏡です。主鏡の口径はハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4m、解像度はハッブル宇宙望遠鏡と変わりませんが、視野の広さはその100倍もあり、可視光と赤外線で観測します。

ローマン宇宙望遠鏡は、そのミッションの1つとして、このような優れた能力を活かして、1a型(いちえいがた)超新星爆発を観測し、ダークエネルギーの謎の解明に挑みます。

■1a型超新星爆発とは?

太陽質量の1~8倍ほどの質量の恒星が、核融合の燃料を使い果たして、死を迎えると、核融合の燃えカスである炭素と酸素を主成分とする恒星のコアが剥き出しの形で残されます。これが白色矮星です。

この白色矮星はとても重力が強いです。そのため、連星があると、連星の物質が、白色矮星に引き寄せられて、白色矮星に降り積もります。こうして、白色矮星の質量が一定の限界(チャンドラセカール限界=太陽質量の1.4倍ほど)を超えると、中心部分で炭素の暴走的な核融合がおこり、白色矮星が吹っ飛びます。これが1a型超新星爆発です。

このように、1a型超新星爆発は、チャンドラセカール限界を超えると、起こるために、その明るさはほぼ一定で、標準光源として活用されています。

例えば、1a型超新星爆発を使えば、天体、例えば1a型超新星爆発が起こった銀河などまでの距離を測ることができます。光源は離れれば離れるほど暗くなるので、1a型超新星爆発の真の明るさと観測によって得られた見かけの明るさとの差から、1a型超新星爆発までの距離が計算できるのです。

■1a型超新星爆発とダークエネルギーの関係とは?

不思議な事に宇宙は加速しながら誇張していることが解っています。このように宇宙を加速度的に誇張させている原因として仮定されているのがダークエネルギーです。

実にこの宇宙の68%はこのダークエネルギーで占められていると考えられています。ちなみに、普通の物質は5%、ダークマターは27%を占めています。

ところで、1a型超新星爆発ならば、そこまでの距離が解りますが、その赤方偏移を調べれば、その後退速度も解ります。

光源が遠ざかっていくとき、ドップラー効果によって、光の波長が伸びて、赤みがかります。これを赤方偏移といいます。そして、どの程度、赤方偏移しているか調べると、光源がどのくらいの速さで遠ざかっているのか解るのです。

超新星爆発が、異なった距離ごとに、どれくらいの速さで遠ざかっているのか、比較すれば、宇宙の誕生以来、宇宙の誇張の速さが、どのように変化してきたのか解ります。これは、ダークエネルギーが、宇宙の誕生以来、変化したのか、もし変化したのなら、どのように変化したのか理解することを手助けしてくれます。

ローマン宇宙望遠鏡は、その優れた能力によって、これまでになく遠くにある数千の1a型超新星爆発を発見するだろうと期待されています。

ローマン宇宙望遠鏡は、これまで観測機器の限界からあまり調査されてこなかった宇宙の誕生から40億年~120億年ほど(between about four and 12 billion years old)までにおけるダークエネルギーの宇宙の誇張への影響を詳しく調べることで、ダークエネルギーの謎を解明するための大きな手掛かりを与えてくれるのではないかと期待されています。

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/飯銅重幸

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