「8の字」描き4万キロの旅 ハリオアマツバメの渡り経路解明 世界初

ハリオアマツバメ(撮影・和賀大地さん)

 北海道で繁殖し、生態がほとんど知られていない渡り鳥ハリオアマツバメの渡りの経路を、長崎大などの研究グループが解明した。世界初とみられる。日本から南半球のオーストラリアにかけて大きく「8の字」を描くルートで、総移動距離は地球1周に相当する約4万キロに及んだ。

山口典之准教授

 長崎大環境科学部動物生態学研究室の山口典之准教授(48)を中心に酪農学園大(北海道)、慶応大の研究者や映像制作会社が共同で研究。北海道に繁殖地、オーストラリアに越冬地があることは知られていたが、具体的な渡りのルートは分かっていなかった。「8の字」の渡りはほかに例がないという。
 ハリオアマツバメは体長約20センチ、翼長約50センチ。ずんぐりとした胴体と鎌のような幅の狭い羽が特徴。秋の渡りで本県上空を飛ぶ姿が見られる。時速約170キロで水平飛行し、ほとんど空中で生活。オーストラリアの越冬数は過去60年間で75%減少し、絶滅が危惧されている。
 調査は、北海道で捕獲された5羽に小型の移動記録機器(長さ約2センチ、重さ約0.7グラム)を装着し、1年後、渡りから戻った4羽の記録器を回収。センサーの記録から日の出や日没の時間、緯度・経度を推定し経路を割り出した。
 調査結果によると、北海道から南下し九州から朝鮮半島へ北上。中国大陸を西に進んだ後、南へ方向を転換し越冬地のオーストラリア東部に到着する経路。春になると、北西に進み、南シナ海から北東へと「く」の字に向きを変え、北海道に戻った。
 渡り鳥の経路としては珍しく「8の字」を描いていることについて山口准教授は地形や風の影響と推測。「ツバメは小型の昆虫を空中で採食するため、飛翔昆虫が多い陸伝いに移動しているのではないか。風に乗って移動する部分もあり、全体としての経路が形成されているのかもしれない」と話す。
 個体数減少の要因については、気候変動により、渡りの際の風の状況が変化していることや伐採や森林火災で巣穴やねぐらとする木が減少していることなどを可能性として挙げた。
 山口准教授は「子どもたちが好奇心を抱き、図鑑に紹介されるようなスケールの大きな渡りを解明できたのは大きな成果」とし、「種の保全にも貢献したい。人工的に巣場所をつくるなど対策も必要」と話している。

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