阪神の黄金時代到来か 主力は20代中心…起点は金本前政権からの「脱FA補強」

「若さ」もあって、今季の阪神ベンチは明るい

セ・リーグ首位の阪神は11勝6敗2分けで5月を終えた。そこに新たに加わったのが高卒入団3年目までのフレッシュマンたちだ。プロ初勝利を挙げた西純矢(19)、及川雅貴(20)の両投手に加え、野手では3年目の小幡竜平(20)も勝利に貢献している。今年の猛虎は2005年以来のリーグVだけでなく、明るい未来も見えてきた。

怪物新人・佐藤輝明外野手(22)や遊撃に定着している中野拓夢内野手(24)、開幕から先発ローテーションの一角を担って既に3勝の左腕・伊藤将司(25)など、今年の阪神は大学・社会人出の即戦力新人が快進撃を支えている。加えて5月には将来を担う下の世代の底上げにも目を見張るものがあった。

5月19日のヤクルト戦でプロ初先発初勝利を飾った西純、同30日の西武戦で中継ぎとして1回2/3を無失点に抑えてプロ初白星を飾った及川の高卒2年目コンビが象徴的な存在だ。さらに野手では昨季一軍で54試合に出場した小幡が同14日の昇格後、出場8試合中6試合でスタメンを託されるなど下半身の故障で抹消中の糸原の穴をカバーしている。

3人はいずれも矢野燿大監督(52)就任以降のドラフト入団組。年長の小幡でさえ、まだ20歳と若く、編成事情に詳しい関係者も「20代後半の今のチームの中心となる層から年代、年齢構成でも理想的なバランスが取れたチームになってきた」と大いに手応えを感じている。

選手会長・近本、主将の大山が今年27歳で、その下に24歳の中野、22歳の佐藤輝、20歳で高卒3年目の小幡と、30歳の梅野を頂点に現在の一軍主力野手には理想的な年齢層で構築されたピラミッドが完成しつつある。

これは矢野政権以降の補強路線やドラフトなど、中長期的な編成戦略が実を結んできた証とも言えるだろう。金本前監督時代を境にFA補強など他球団から完成された人材をチームの中心に据えるのではなく、ドラフト補強を中心に自前の選手を育て、主力に据えていく育成型のチーム作りに方針転換。2018年オフに当時の二軍監督から昇格した矢野監督就任以降、このスタイルを加速させた。

ドラフトでの獲得層を見れば、より明白だ。15~17年の金本政権下では3年間で指名した全21選手のうち高卒組はわずか4人。矢野監督就任後は昨年までの全24選手のうち、8人が高卒入団だ。大学・社会人出の「即戦力型」から素材重視の人材補強で「育てて勝つ」ことを念頭に編成ビジョンを練ってきた。

二軍での準備期間を経て、5月に一軍の勝利に貢献した西純や及川、小幡はそんな矢野政権以降のドラフト戦略で獲得した〝チルドレン〟。一方で10年代のチーム編成の中心を担ったFA補強は18年オフの西勇以降、ピタリと止まっている。

このまま首位を快走して16年ぶりのリーグV達成となれば、それは同時に黄金時代の幕開けとなる可能性も高い。

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