佐藤輝も柳田もねじ伏せる西武平良の凄み 26戦無失点も指揮官が抱える“ジレンマ”

西武・平良海馬【写真:荒川祐史】

佐藤輝は2打席2三振、柳田は通算8打数1安打

21歳の最速160キロ右腕、西武・平良海馬投手の快進撃はどこまで続くのだろうか。5月を終え、開幕からの連続無失点記録は、2012年の岡島秀樹(ソフトバンク)に並ぶパ・リーグタイの26試合に達した。チームの命運を握るのはもちろん、今夏の東京五輪での金メダル獲得の期待まで、その右腕にかかる可能性がある。

平良がまたひとつ凄みを見せつけたのが、5月29日に本拠地・メットライフドームで行われた阪神戦だった。本来の守護神・増田達至投手が15試合で防御率6.75の不振に陥り、5月4日に登録を抹消されて以来2軍調整中。代役のリード・ギャレット投手も28日の同カードでドラフト1位ルーキー・佐藤輝に決勝3ランを浴びるなど5失点と炎上していたことから、1-0で迎えた9回、平良に今季3度目のセーブシチュエーションが託された。

「9回はやっぱり緊張する」と振り返った通り、先頭の大山には1球もストライクが入らず四球。しかも3球目はスライダーがワンバウンドして捕手の森が後逸し、4球目は149キロの速球が大山の頭上を通過してバックネットを直撃する荒れようだった。続くサンズの3球目には代走・植田に二盗を許し、無死二塁の大ピンチを背負った。ところが、辻発彦監督が「ギアが上がった」と評したように、ここから本来の投球を取り戻すのだから、精神力と修正能力も半端ない。

サンズをカットボールで投ゴロに仕留め、28日に1試合3発を放っていた佐藤輝にも真っ向勝負を挑んだ。内角のカットボール2球でカウント0-2と追い込み、最後はど真ん中の155キロ速球でバットに空を切らせ3球三振。前夜と合わせ、2打席2三振にねじ伏せた。

気になるのは登板過多…すでに今季もチームトップの26試合

日本を代表する強打者のソフトバンク・柳田が、最も苦手とする投手としても知られている。柳田との通算対戦成績は8打数1安打(打率.125)3三振1四球だ。

昨季も開幕から10試合は、無失点どころか1本のヒットも許さなかった。昨年7月19日の楽天戦で浅村に初ヒットとなる適時打、さらに内田に満塁本塁打を浴び記録は途絶えたが、シーズントータルで防御率1.87をマーク。高卒3年目にして新人王に輝いた。ストレートが速いだけでなく、スライダー、チェンジアップ、カットボールを操り、クイックモーションも速い。侍ジャパンには未選出だが、東京五輪が開催されれば、これほど安定感のあるリリーバーを使わない手はないだろう。

そうなると、懸念されるのは登板過多だ。ブレークした昨季は、ロッテ・益田と並びリーグ最多の54試合。今季もチームトップでリーグ3位の26試合(5月31日現在)に上り、打順の巡りを見て最も手ごわい打者が並ぶイニングに起用されるケースもある。本人は「とにかくゼロで戻ってくるのが目標」と一貫している。

沖縄・石垣島出身で、八重山商工高3年の夏には県大会1回戦敗退。2017年ドラフト4位で入団した当初、173センチ、84キロ(現在は100キロ)の巨体を生かせるようになるには時間がかかると見られていたが、想像を超えるトントン拍子の成長ぶり。そんな剛腕に頼りたい、しかし故障させたら元も子もない……。辻監督は究極のジレンマに連日頭を悩ませている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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