新幹線長崎ルート 佐賀、在来線協議を拒否 フル以外の別ルート検証要求

 九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)を巡り、国土交通省と佐賀県は31日、4回目となる「幅広い協議」をオンラインで開いた。並行在来線の運営に関し、国側がJR九州を交えた3者での意見交換を提案したが、県側は「フル(規格整備)を望んでない中、協議といわれても今の時点ではあり得ない」と拒否。一方、県はフル規格案について現行のJR佐賀駅を通る以外の2ルートについても整備効果を示すよう初めて求めた。
 新型コロナウイルスの影響もあり、約7カ月ぶりに開催した。同県の山下宗人地域交流部長は協議の冒頭、26日に与党検討委員会がフル規格を前提にした方針を示したことに「強い違和感がある」と表明。幅広い協議がフル規格前提でないことと、地元の合意なしで事業化に向けた手続きを進めないことの2点をただし、国側をけん制した。
 フル規格案のルートに関し、県側は佐賀空港や佐賀市北部を通る別の2ルートについても検証するよう提案。国側は「他のルートについても協議ができるよう準備していく」と応じた。佐賀空港ルートについては、空港接続で利便性が向上することによる採算改善効果も加味し試算する考え。
 同区間の整備方式を巡っては、国側が全国の新幹線ネットワークがつながる効果は大きいとし、フル規格が最も適していると主張。県側は速度を抑えた形でのフリーゲージトレイン(軌間可変電車)もまだ検討の余地があるなどとし、議論は平行線をたどった。
 国交省の足立基成幹線鉄道課長は協議後、並行在来線に関しJR九州を交えた3者での意見交換の提案を拒否されたことに「残念」としたが、「ルートについて佐賀県側から能動的な話があったのは進歩」と評価した。
 一方、山下部長は別ルートの検証提案について「決して(フル規格に)舵(かじ)を切った訳ではない」と強調。今後各ルートを整理していく中で、デメリットとして在来線問題が出てきた場合、「それをカバーするためにどういう方法があるか、そういった話は先々あるかもしれない」と述べた。


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