もう6月

 今が梅雨の真っただ中にあることをつい忘れてしまいそうな好天がここ数日続いている。きょうもカラリとよく晴れそうだ。きょうから6月▲〈水無月は時の流れの匂う午後「もう」と思えり「まだ」と思えり〉-昨年の今ごろ、歌人の俵万智さんがツイッターで自作を紹介していた。〈6月は一年の真ん中で、ちょっと立ち止まる感じになる〉と短い解説が添えられている▲カレンダーは前半最後のページだ。もうこんな時期か、と考えたり、まだあと半分あるぞ、と思えたり。同じ分量を眺めて「もうこんなに減った」と考えるか「まだこれだけ残っている」と考えるか-はよく知られる性格診断だが▲こと今年の暦に関する限り、多数派は「もう」派ではないだろうか。きちんと言葉で語られるべきことが何も語られないまま、日付ばかりが過ぎていく。晴れても気分は重い▲五輪開催を疑問視する声がどんなに強まっても、首相や大臣は「安心・安全な大会として…」としか言わない。しかし、その確信の根拠や開催に固執する理由はいまだに語られる気配がない▲もちろん、どんな言葉で説明を試みたところで、理解や共感がどこまで広がるかは未知数だ。ただ、政治家がその努力を放棄してしまったら民主主義にならない。ここらで立ち止まらなくては。(智)

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