【安田記念】打倒グラン筆頭候補 インディチャンプ復権の指標とは?

一昨年の春秋マイルGⅠを制したインディチャンプの復権は?

「2着じゃダメなんでしょうか?」と馬連党が聞いたとしよう。馬単党は迷わずこう答えるだろう。「2着じゃダメなんです。グランアレグリアが1着を外れてこそ、配当が跳ね上がるんですから」。今や完全無欠のグランアレグリアを負かし得る馬がいるのかが焦点となる第71回安田記念(6日=東京芝1600メートル)。「音無番」の松浪大樹記者が、一昨年の春秋マイル王インディチャンプの復権の可能性に迫る――。

ほとんどの馬がすでに手合わせをして、一蹴されてしまった背景を考えると、グランアレグリア以外の馬を持ち上げるのは難しい。それは取材する側だけでなく、取材される側も同じこと。実際、一昨年の春秋マイルGⅠを制したインディチャンプを管理する音無調教師さえも「グランアレグリアが強いけどね」と“前置き”をするほどだ。

そう、グランアレグリアは強い。この馬に対して強気の姿勢を貫くのは非常に難しいが…。まずグランアレグリアに次ぐ2番手候補としてなら、インディチャンプの指名は実に容易に思える。

気性の難しいステイゴールド産駒のうえに、展開に左右されやすい差し脚質ながらも…。キャリア20戦で<8・2・5・5>の実績を積み上げた。掲示板を外したレースはここまで一昨年の香港マイル7着のみ。それもスタートの出遅れに加え、直線で前が壁になる大きな不利があった度外視すべきレースだった。ちなみに残る馬券圏外4戦はすべて4着である

前走の高松宮記念0秒1差3着を振り返りつつ音無調教師は「まあ、初めての6ハロン戦で格好はつけてくれたけどね。直線で外を通った馬が伸びる状況の中、少し馬場の悪い内を通る形になった。その分の差も少しあったかな。今回は実績のある距離に戻るし、しっかりと走ってくれると思う」。やはり“2番手評価”としてなら自信を持って推せる雰囲気にはある。それでもグランアレグリアの上を狙うのは厳しいのか? もちろん、リスキーな馬券戦略にはなるが、個人的にはその可能性すら感じている。

2着に敗れた昨年のマイルCS時のインディチャンプは右トモを痛めてスプリンターズSを回避し、過去に経験したことのない休み明けでのGⅠ挑戦になったことを忘れてはならない。

「周りが言うほど悪くはないけど、素晴らしい仕上がりだった昨年の状態に比べれば、そこには間違いなく届いていない。崩れはないとは思いますが、自信満々ではないですね」がインディチャンプの調教に乗り続けている生野助手の当時の偽らざる本音だった。それでも0秒1差の2着だったのだ。

ちなみに太め残りを解消できなかった3走前の阪神カップ(3着)、帰厩した段階から馬体が緩かった前々走の阪急杯(4着)はマイルCS以上に仕上がりが微妙で、前走の高松宮記念にしても「これがマイル戦なら…ってくらいには上がってはきてますけど、やはり一昨年のマイルCSには及ばないですね」が当時の生野助手の感触。つまり、ここ数戦はピークと思える状態では走っていないのが実情ながら、それでも大きく崩れることがないのは、傑出した能力、そしてその能力に衰えのない証しともいえるだろう。ならば一昨年のマイルCS時のレベルに戻ってくれさえすれば…。

そこで中間の調教過程に注目だ。攻め駆けするインフィナイトを先に行かせ、馬なりでフィニッシュする相手のリズムに合わせることはせず、鞍上がしっかりと手を動かす形を取った坂路での1週前追いは見た目以上に中身が濃かった。4ハロン51・6―12・4秒の時計はインディチャンプにとって“通常運転”の範囲だが、数字には表れない部分に、最近になかった“良さ”を感じた調教。騎乗した生野助手も「スピードに乗っていく感じが良かったし、相手をかわしてから気を抜いてしまうような面を出すと良くないので、最後も手を動かしていったんですけどね。そのしぐさにもちゃんと反応していました。疲れたところもないですし、これならレースの週も速い時計を出しにいっていいかもしれませんね」と久々にいい雰囲気だ。

一昨年のマイルCSとの比較を求めた時には「いや、さすがに届いてないです」と彼らしい冷静なジャッジを下していたが…。それでも昨秋以降では一番の仕上がりになりそうなムードがある。思えば「究極」と言わしめた一昨年のマイルCS当時も、本当に素晴らしかったのは1週前ではなく、レース当週の最終追い切りだった。2日に予定されている追い切りの動き次第では、グランアレグリアを逆転する可能性も出てくるかも…。まさに注目の水曜となりそうだ。

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