予測しづらい季節、豪雨や熱中症に正しく備えよう 梅雨到来、「顕著な大雨に関する気象情報」が出たら避難を

 西日本は記録的に早い梅雨入りとなった。九州北部と中国、四国が5月15日、近畿、東海が同16日で、平年より20日以上早い。それから約1カ月遅れて、気象庁は関東甲信地方が「6月14日に梅雨入りしたとみられる」と発表した。ここ10年で最も遅い。東日本と西日本で大きく入梅時期の発表がずれる変則的な年となったが、ようやく本格的な梅雨となった。

 梅雨は雨や曇りが続くだけではない。ここ数年は、後半に入ると豪雨被害が発生している。「線状降水帯」という言葉を耳にしたことがある方も多いだろう。熱中症になりやすい時期でもある。無防備でいると思わぬ被害に遭うこともある季節に、正しく備えたい。(日本気象協会、気象予報士=安野加寿子)

JR大阪駅付近で傘を差して歩く人たち(2020年6月)

 ▽波打つ前線、予想困難な季節

 そもそも梅雨とは「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」と定義される。気象庁は時季やその後の天気の移り変わり等も考慮して発表する。1カ月以上続く時間スケールの大きい季節現象なので「一時的に梅雨前線がかかったから」「2、3日続けて雨が降ったから」という理由だけでは発表されないこともある 。

 9月ごろには梅雨入り・梅雨明けの確定を行う。その際、最初の発表が変更されることもある。意外と繊細な現象なのである。

 梅雨前線は、北側のオホーツク海高気圧から吹き出す寒冷で湿った空気と、南側の太平洋高気圧から吹き出す高温で多湿の空気がぶつかり合ってできる「停滞前線」。停滞といっても、動いていないわけではない。低気圧が前線上を移動したり南北の空気の勢力が変わったりすると、東西南北に波打つように動くのだ。

 春や秋の移動性低気圧に比べると、梅雨前線の動きは微妙だ。まだまだ予測が難しく、短期予報はころころ変わってしまう。空だけでなく、気象予報士も泣きたくなる季節なのだ。

豪雨の影響で氾濫した球磨川(熊本県人吉市)=2020年7月

  ▽熱中症と大雨に注意

 短期予想の難しい梅雨。では、少し長いスパンではどうだろうか。地域別に見てみよう。

 【沖縄・奄美】6月後半は降水量が多くなりそう。7月は太平洋高気圧にしっかり覆われ、夏本番に。

 【九州~関東甲信】6月後半から7月にかけて、ほぼ平年同様に曇りや雨の日が多い。梅雨の晴れ間は熱中症に注意。降水量も多く、梅雨後半にかけては特に大雨への警戒を。

 【北陸・東北】6月後半から7月にかけては平年並み。ぐずついた天気の日が増える。気温が平年より高い予想のため、梅雨の間も熱中症には注意。局地的な大雨に警戒が必要だ。

線状降水帯が発生している地域を楕円(だえん)形で示した、気象庁ホームページ地図のイメージ(気象庁提供)

 ▽線状降水帯

 今年の6月17日から、気象庁は線状降水帯による顕著な大雨が確認された際に「顕著な大雨に関する気象情報」を発表する。浸透してきた言葉で危機感を高め、避難へのアクションを加速させる狙いだ。

 線状降水帯とは「次々と発生した積乱雲が、数時間にわたってほぼ同じ場所にかかり、局地的に豪雨をもたらす」雨域を指す。発生から数時間で避難が困難な状況に陥る危険性がある。

 2017年7月は九州北部(福岡県朝倉市など)、18年7月は西日本各地で、20年7月は九州南部(熊本県球磨村など)で、いずれも線状降水帯による被害が顕著だった。

 局地的な気象災害では特に「自分で自分の身を守る」必要が出てくる。住んでいる土地で起きうる災害の危険性を把握するのはもちろんのこと、雨・風の音や土のにおいの変化など、現場でなければ分からない変化もある。

 梅雨から9月の台風シーズンにかけて、気象情報や避難情報には、特に敏感になっていただきたい。

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